原発の避難訓練 想定と現実の溝を埋めよ

 図らずも「想定」と「現実」とのギャップが浮き彫りになったといえるのではないか。少なくとも島民らの不安を払拭(ふっしょく)できたとは言い難い状況である。

 重大事故を想定して3、4両日に行われた九州電力玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の原子力総合防災訓練のことだ。国や佐賀、長崎、福岡3県などによる合同訓練で、自治体関係者や住民ら計約6500人が参加した。

 佐賀県北部で地震が発生し、玄海原発4号機が炉心を損傷して放射性物質が放出された-。そんな想定で住民の避難誘導や傷病者の汚染除去などの訓練を行った。

 中でも注目されたのは、4日にあった離島の避難訓練である。玄海原発から30キロ圏内には21の離島があり、荒天で島から避難できないことも考えられるなど、大きな課題となっているからだ。

 住民らは訓練当日、船を使って島外へ逃げたり、島内に備えられた放射線防護用テントを設置したりした。いずれも実践的な訓練内容だが、冷暖房設備や広さなど居住環境も含めて退避施設の不十分さが露呈するケースもあった。

 南部が30キロ圏内に入る長崎県壱岐市の壱岐島は島内に一時退避施設がない。訓練では消防団員らが海上自衛隊の輸送艇に乗って島外に出た。今回は順調に進んだが、過去の訓練では2年連続で高波のため出航できなかった。避難は天候に左右されるのが現実である。

 参加者からは「実際の事故の際、訓練のようにスムーズにいくとは思えない」との声が聞かれた。住民が不安に思うのも当然だ。

 2011年の東京電力福島原発事故で「安全神話」は崩れ、原発周辺の住民は事故への不安を抱えた生活を余儀なくされている。

 こうした中で、玄海3号機の使用前検査が11日から始まった。九電は3号機の再稼働時期を「来年1月上旬」、4号機を「同3月上旬」とする見通しを示した。

 再稼働の道筋を描くならば、国や九電、関係自治体は避難訓練で浮かんだ課題の解決へ具体的な取り組みを加速させるべきだ。


=2017/09/14付 西日本新聞朝刊=

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