幼児教育無償化 まずは待機児童の解消を

 衆院選で掲げた政党の公約は「国民への約束」だが、実現するには修正が必要なこともある。一度立ち止まって考えるべきだ。

 政府が年内にまとめる2兆円政策パッケージの柱となる幼児教育・保育の無償化のことである。

 検討中の自民党案は、0~2歳は住民税非課税世帯に限り3~5歳は原則、全ての子どもの保育所と幼稚園の利用を無償化する。

 認可外施設などに対する助成額の上限設定が浮上しているが、ほぼ公約に沿った内容といえよう。

 幼児教育・保育の負担軽減は現在でも、低所得者層から所得に応じて段階的に実施されている。

 このため、3~5歳の一律無償化で受ける恩恵は、所得が高い世帯ほど大きくなる。浮いたお金が塾などに回ることで、教育格差が広がるという指摘もある。

 認可保育所に入れず、やむなく認可外施設を利用する世帯は多い。助成額上限の線引きによっては公平性に疑問が生じかねない。

 子育て世帯の経済的負担を軽減することに異存はない。とはいえ深刻な待機児童の解消に優先的に予算を充てるべきではないか。

 認可保育所などへ入れない待機児童は、今年4月時点で2万6千人を超え、3年連続で増加した。政府は本年度末に達成するはずだった待機児童解消を3年先送りした。保育の受け皿整備が、需要増に追い付いていないのが実情だ。

 受け皿が増えるほどに、働きに出る女性は増える。利用料が無料となれば、保育ニーズがさらに膨らむ可能性は高い。

 幼児教育・保育の無償化に必要な財源は8千億円超とされる。3~5歳の無償化を当面は低所得世帯に限り、保育所開設や保育士の処遇改善に注力することも検討に値する。待機児童を解消した後、財政状況を勘案しながら無償化の対象を広げることもできる。

 子どもを預けたい人の希望に応える環境を整える。本当に困っている人を支援する-そんな視点が大切だ。ばらまき政策に陥らないよう、政策効果を見極めた的確な制度設計を政府に求めたい。


=2017/11/25付 西日本新聞朝刊=

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