自民党の改憲論 安直に過ぎる主張の列記

 こんな安直な論点整理で自民党は憲法改正を進めようというのか。党内議論が足りないからだ、と指摘せざるを得ない。

 自民党憲法改正推進本部が、先の衆院選公約に掲げた9条への自衛隊明記▽緊急事態条項▽教育無償化・充実強化▽参院選「合区」解消の4項目について、論点整理を公表した。

 党内の主張を列記しただけで内容は薄い。こんな課題があり、こうした問題を深掘りする必要がある-そこまで丁寧に示さないと、国民的議論にはつながらない。

 焦点の自衛隊明記については、安倍晋三首相が突然提起した「戦争放棄をうたう1項と戦力不保持を定める2項を維持する」案と、野党時代の2012年にまとめた憲法改正草案に沿う「2項を削除して自衛隊の目的や性格をより明確化する」案を併記した。

 公明党との与党協議を控え、2項維持のまま自衛隊を明記する前者が有力ともされるが、では自衛隊は戦力ではないのかという疑問が付きまとう。後者は憲法の三大原理の一つである平和主義がないがしろにされる恐れがある。

 そうした点には触れずじまいだ。緊急事態条項も、国会議員の任期延長案と私権制限を含めた政府への権限集中案を並べただけで、私権や人権が侵害される懸念には何の記述もない。

 自民党の金城湯池である参院1人区の合区解消には党利党略の思惑が漂う。解消するなら1票の格差是正はどうするのか。教育無償化も、なぜ憲法に書き込まねばならないのか、財源は担保できるのか-そうした説明はない。

 こう考えてくると、4項目とも差し迫った国民的課題ではないことが分かる。そうであるならば、もっと慎重で徹底的な憲法論議こそ求められているのではないか。

 憲法改正を悲願とし、20年の「改憲施行」への意欲を繰り返し示す安倍首相にあおられ、「自民1強」の政治状況が続くうちに-と、拙速に取りまとめた印象が拭えない。もっと地に足の着いた論議を自民党に求めたい。


=2017/12/26付 西日本新聞朝刊=

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