改憲を急ぐ首相 国民の不信感受け止めよ

 やはり自らの悲願を在任中に実現したいのだろうか。安倍晋三首相は年明け以降、憲法改正に一段と前のめりになっている。

 年頭会見で「スケジュールありきではない」と述べる一方、「今年こそ新しい時代の希望を生み出すような憲法の姿を提示し、国民的議論を一層深める」と語った。

 自民党も急ぐ。3月をめどに、9条への自衛隊明記▽緊急事態条項▽参院選合区解消▽教育無償化・充実の「改憲4項目」案をまとめ、通常国会中に衆参の憲法審査会へ提案、秋の臨時国会で発議-と矢継ぎ早の日程を想定する。

 なぜ急ぐのか。首相は「停滞する論議を活性化させた」と言うが、個人的理由も見え隠れする。

 首相は9月の党総裁選で連続3選を果たすと、在任が2021年まで延びる展望が開ける。ただし来年は天皇陛下退位と新天皇即位を控え、国論を二分する憲法論議には適さないとの見方もある。自ら掲げた改正憲法の20年施行に時間的余裕があるわけではない。

 来年夏の参院選で改憲勢力が発議に必要な3分の2の議席を失う可能性もゼロではない。そんな不安や焦りもあるのではないか。

 本社加盟の日本世論調査会が昨年12月に行った調査では、改憲の国会論議を「急ぐ必要はない」との回答が67・2%に達した。首相の下での改憲には53・1%が反対で、賛成の39・2%を上回った。

 読み取れるのは憲法上の疑義が指摘される安全保障関連法を強引に成立させるなど憲法軽視ともいえる首相への不信感ではないか。

 首相は「国民主権、基本的人権、平和主義の基本理念は今後も変わらない」とも述べる。だが、9条への自衛隊明記は戦争放棄や戦力不保持など平和主義の根幹に影響しかねない。緊急事態条項に私権制限を盛り込めば、基本的人権の侵害につながる懸念もある。

 首相の憲法観に漂う危うさを国民は冷静に見つめている。その視線を首相は真正面から受け止めてほしい。慎重さが求められる憲法論議を首相のために急ぐ-などということがあってはならない。


=2018/01/12付 西日本新聞朝刊=

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