副大臣のやじ むなしく響く「寄り添う」

 耳を疑う発言だ。一議員のやじと看過するわけにはいかない。

 松本文明内閣府副大臣(自民党)が25日の衆院本会議で、野党議員が沖縄で相次ぐ米軍ヘリコプターのトラブルに関する政府の対応をただしている時「それで何人死んだんだ」とやじを飛ばした。

 松本氏は後に苦しい釈明をしたが、発言を普通に聞けば、死者が出てないのだから大したことはない、大げさに騒ぐな-という意味だと受け止められる。

 驚くべき認識不足である。米軍の軍用機は沖縄でこれまでに数々の事故を起こしており、中には多くの死者を出した事例がある。今回の一連のトラブルでも、昨年12月には運動場で授業中の児童から十数メートルの場所に重さ7・7キロの窓枠が落下した。重大な人的被害が出なかったのは偶然にすぎない。

 責任のある政治家なら、人を巻き込む事故の兆候と受け止め、万全の対策を急がねばならない、と考えるところだ。そこへ松本氏は「それで何人死んだんだ」と発言した。人が死んでから動けばいいとでも考えているのだろうか。

 さらにこの発言には、米軍基地に伴うさまざまな危険や負担を押し付けられた県民の苦しみを、ことさらに過小評価する意識がにじみ出ている。松本氏が副大臣という安倍晋三内閣の一員だったことを考えれば、問題の根は深い。

 沖縄では28日から名護市長選が始まった。米軍普天間飛行場の辺野古移設問題が最大の争点である。移設反対の現市長に対し、移設を推進する安倍政権が対立候補を支援し、激戦となっている。

 松本氏はやじを問題視され、副大臣を辞任した。事実上の更迭である。安倍政権は最近、不時着ヘリと同型機の飛行停止を米軍に申し入れるなど、沖縄県民の心情を重視する姿勢を見せているが、名護市長選を意識した「迅速な対応」ではないかと疑ってしまう。

 安倍首相は国会答弁などで「沖縄に寄り添う」と繰り返している。しかし、副大臣のやじを耳にした後では、「寄り添う」の言葉もむなしく響くばかりだ。


=2018/01/30付 西日本新聞朝刊=

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