米国の新核戦略 「冷戦の軍拡」に戻るのか

 世界を冷戦時代の核軍拡競争に逆戻りさせるつもりなのか。

 トランプ米政権が先週末、新たな核戦略指針を公表した。「核なき世界」を追求したオバマ前政権の理想主義を完全に放棄し、「力による平和」を信奉するトランプ大統領の攻撃的な安全保障観を投影した内容となっている。

 指針の中で大きな問題点の一つは、核の使用条件の緩和だ。

 核の使用を「死活的利益を守るための極限的状況」に限定した前政権の方針を踏襲しながらも、「市民やインフラへの重大な非核攻撃」を受けた場合も含む‐として、核の使用条件を緩和した。つまり「核でない兵器で攻撃されたとしても、核兵器で反撃するかもしれないぞ」という威嚇である。

 指針には爆発力が低い小型核の開発も盛り込まれた。米国の保有する核兵器が強力で市民への被害が大き過ぎるため、事実上使えなくなっている現状を補完する目的である。「使える核兵器」を持ちたい、ということだ。

 こうした米国の新戦略が念頭に置いているのは、とりわけロシアである。戦術核兵器の戦力で米国より優位に立つロシアに対し、同等の対抗手段を保持することで抑止を図る狙いとみられる。

 危険な発想だ。仮に米国が限定的な紛争の鎮圧のために小型核を使ったとしても、相手の誤解や恐怖を呼び起こし、大国同士の全面的な核戦争に発展する可能性が高まる。そうなれば世界の破滅だ。

 また、米国が核戦力を増強すれば、それがロシアや中国を刺激し、核大国間の軍拡競争に発展するのは目に見えている。冷戦後の核軍縮の努力を御破算にし、世界に不安定と恐怖をもたらす誤った戦略と言わざるを得ない。

 河野太郎外相は新戦略公表を受けて「高く評価する」との談話を出した。唯一の戦争被爆国として「核廃絶」を掲げているはずの日本政府が、核使用を緩和し核軍拡を招く新戦略を評価するとは、本末転倒もいいところだ。せめて核軍縮に関してぐらいは、日本外交の自主性を発揮できないものか。


=2018/02/07付 西日本新聞朝刊=

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