自民改憲案 国民の疑問は置き去りに

 国の在り方を左右する憲法を巡る政権党の論議にしては、あまりにも無責任で安直に過ぎる。自民党の憲法改正論議のことだ。

 自民党憲法改正推進本部は22日の全体会合で、9条は安倍晋三首相の提案に沿い、戦争放棄を定める1項と戦力不保持などを規定する2項を維持したまま、自衛隊保持を明記する方針を決めた。

 これで緊急事態条項、参院選の合区解消、教育充実を加えた「改憲4項目」の方向が出そろった。

 しかし全体として「まず改憲ありき」の姿勢が目立つ。あすの自民党大会までに決着を図る日程を最優先にした事情もあり、論議が深まったとは言い難い。国民の懸念や疑問に答えず、細かな文言修正に躍起となった印象しかない。

 自衛隊明記については、全体会合の会場が怒号に包まれる中、推進本部の細田博之本部長が一任を取り付けた。強行採決にも似た手法にあぜんとするばかりだ。

 細田氏は、新たに9条の2を設け「前条の規定(2項)は必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として自衛隊を保持する」との案を想定する。

 1項と2項の維持は、現行憲法の平和主義を尊重する公明党や改憲に慎重な世論への配慮とみられる。それでも疑問は募る。

 2項が禁じる戦力に自衛隊はなぜ当たらないのか。自衛隊の任務範囲が曖昧だと安全保障関連法が行使を容認する集団的自衛権の範囲が無原則に広がる恐れもある。そうした論点は素通りされた。

 共同通信社の最新世論調査も9条への自衛隊明記は反対の47・0%が賛成の39・1%を上回った。

 だからといって、議論続行を求めた石破茂元幹事長らが主張する2項削除論も平和主義の変容につながる恐れが大きい。

 首相は「自衛隊明記で任務や権限に変更が生じるわけではない」などと国会答弁した。そもそも改憲の緊急性は薄いのではないか。

 他の3項目も法律で対応可能との指摘もある。このまま与野党協議に進むわけにはいかない。もっと党内論議を深めるべきだ。

=2018/03/24付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]