カジノ与党合意 国民の懸念に応えたのか

 ギャンブル依存症をはじめカジノ解禁に向けた国民の懸念に正面から向き合った-とは、とても言えない安易な決着だ。

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法案に関する自民、公明の与党協議が決着した。今国会での成立を目指す自民党と、慎重論が根強い公明党の合意を最優先にした妥協の産物にほかならない。

 一例を挙げたい。日本人や国内在住外国人が対象の入場料について、政府原案は1人1回につき2千円だった。公明はシンガポール並みの8千円を主張し、自民が5千円と譲歩した末に両党は6千円で歩み寄った。

 2千~5千円だと依存症の心配があるが、8千円では高額過ぎて入場が見込めない-ということで中間にしたのだろうか。なぜ、6千円なら適切か。説得力のある説明は聞かれない。

 一事が万事だ。IR設置数の上限は、自民が4~5カ所、公明が2~3カ所を挙げ、3カ所で落ち着いた。とはいえ最初の設置認定から7年後に見直すという。まさに玉虫色の決着だ。

 カジノを巡ってはギャンブル依存症の増加だけでなく、暴力団の介入、犯罪資金の流入や資金洗浄(マネーロンダリング)、青少年への悪影響、周辺地域の治安悪化など、さまざまな疑念を国民は抱いている。

 そもそも賭博行為を禁ずる刑法との整合性について疑問は消えない。共同通信社の先月の世論調査によると、カジノ解禁に反対は65・1%で、賛成の26・6%を大きく上回った。

 そうした不安や疑問について本質的論議を深めた形跡が与党協議にはほとんどない。日本人と在住外国人の入場回数制限は政府案の「連続7日間で3回、28日間で10回まで」をそのまま通した。あきれるばかりだ。

 2016年に、実施法案の国会提出を政府に義務付けるIR整備推進法が成立した際の付帯決議に「カジノには厳格な入場規制を導入」などと明記したことを与党はもう忘れたのか。

 政府、与党は今月中にも実施法案を国会提出の予定だが、森友学園を巡る決裁文書改ざんなど政府の相次ぐ不祥事や国会日程の関係で、法案審議の先行きは見通せないという。

 ならば、なおさら成立を急ぐ必要はない。整備推進法は国会延長のどさくさに紛れるような形で論議不足のまま成立したが、実施法案ではカジノの是非も含めて今度こそ時間をかけて徹底的に論議する必要がある。

 長崎県と同県佐世保市などIR誘致に取り組む全国の地方自治体も、カジノが本当に地域振興につながるか。数々の疑念は払拭(ふっしょく)できるのか。地域住民を交えて再検討してはどうだろう。

=2018/04/10付 西日本新聞朝刊=

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