自殺者2万人 小さなSOSを見逃すな

 厚生労働省が警察庁の統計を基に発表した2017年の自殺者数は、前年より576人少ない2万1321人だった。

 8年連続の減少とはいえ、人口10万人当たりの自殺者数(自殺死亡率)は16・8人で、先進国の中では高い水準である。

 バブル経済崩壊後の不景気を背景に、自殺者が急増した1998年より前の水準に戻っただけともいえる。官民挙げて取り組む自殺防止対策を一段と拡充していく必要がある。

 16年施行の改正自殺対策基本法は、都道府県と市町村に自殺対策計画の策定を義務付けた。地域ごとの自殺の実態に即して、きめ細かい対策を促すためだ。ただし、計画の策定は順調に進んでいるとは言い難い。

 自殺死亡率が全国平均を上回り、九州7県で最も高い宮崎県は先月、「県自殺対策推進センター」を開設した。県内6市町にとどまっている自治体計画の策定作業を支援し、全26市町村に広げていくという。

 地域の住民に最も身近な市町村は、自殺対策の中核を担う。こうした動きを九州全域に広げ、自殺者の年代や性別、貧困や雇用状況との関連などを詳細に分析し、実効性の高い計画作りを急ぐべきだ。

 生活困窮者と接点がある福祉行政の職員や、妊娠・出産相談の窓口に関わる職員などが、自殺対策の意識を高めることも肝要だろう。

 中高年や高齢者の自殺死亡率が着実に低下する一方、20歳未満は横ばい状態が続いている。昨年は567人で、前年より47人増えた。

 国は学校における「SOSの出し方教育」を推進している。「弱音を吐くのは恥ずかしい」といった感情的な壁を乗り越えることの大切さや、具体的な逃げ道をどう教えるか。教育現場で知恵を絞る必要があろう。

 小さなSOSを自殺防止につなげるには、教職員への研修や、チームで対応できる校内の態勢づくりも欠かせない。

 ネットの会員制交流サイト(SNS)に、自殺防止の相談窓口を設ける試みも始まった。

 ネットには自殺を助長する情報も多い。神奈川県座間市で昨年、9人の切断遺体が見つかった事件では、ネット上に自殺願望を書き込んだ女性らが被害に遭ったとされる。

 ネット相談では、声の調子や表情が分からず、実情の把握が難しいという。とはいえ、今や若者には電話以上に身近なコミュニケーションの手段である。

 有害情報を適切に排除してSOSをいかに拾い上げるか。業界と行政、市民団体などが協働し、自殺を減らすためにネットを活用する道を探ってほしい。

=2018/04/16付 西日本新聞朝刊=

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