国民投票法 課題は手付かずのままだ

 憲法改正を急ぐ自民党の姿勢は安直に過ぎると私たちは繰り返し指摘してきた。党内論議すら十分でないのが実情だ。

 その点を大前提にしつつ、仮に国会が強引に改憲案を発議したら、最終判断を委ねられる国民投票は大混乱に陥るのではないか。心配でならない。

 改正の手続きを定める国民投票法の課題や懸念が手付かずのまま残っているからだ。

 賛成や反対を訴える運動は、規制の多い公職選挙法に基づく選挙と異なり、投票権のない18歳未満や外国人も含めて原則自由だ。インターネット活用も制限はない。個人間なら金品などによる買収も罪に問われない。

 禁止されるのは組織的に多数の人を買収した場合などだが、多数がどの程度かをはじめ規定には不透明な部分が多い。

 広告・宣伝の制限も少ない。有料CM放送は投票14日前から禁止だが、意見表明だけなら14日前以降も自由に流せる。

 問題は資金力だ。在京民放キー局の場合、視聴率の高いゴールデンタイムの広告料は相当の高額とされる。国民投票法は費用の制限を設けておらず、CM放送の回数や時間帯などで資金力の差が生じる可能性が高い。

 立憲民主党は「資金力が世論を左右しかねない」として規制強化を主張する。国の在り方を定める憲法が資金力で決まっていいはずはない。海外では有料CM全面禁止の例もある。

 ただし国民投票法が運動や広告に制限をあまり設けていないのは、規制や罰則で論議が萎縮しないように-という配慮があることも忘れてはならない。

 公平性のため規制を強化するのか、自由な論議や運動を担保するため規制は最小限にするのか-難しい課題だが、国民的論議を深める必要がある。

 公選法との整合性もどうするか。公明党は山口那津男代表が「国民投票法がきちんと整備されることは優先課題」と語るなど、法整備先行の必要性を繰り返す。当然だろう。

 公選法は2016年の改正で、駅や商業施設に設けることができる「共通投票所」でも投票可能としたり、遠洋航海中の「洋上投票」を船員から実習生に拡大したりした。

 国民投票法にそうした規定はない。このままでは投票所で国民が戸惑う事態が予想される。

 さらに国民投票が有効かどうか決める「最低投票率」導入など、07年の法成立当初から積み残された課題は多い。

 難問だらけで議論には相当の時間を要するとの見方が強い。だからといって国民投票法の課題を置き去りにして、条文を巡る改憲論議を急ぐのは政治の無責任としか言いようがない。

=2018/05/04付 西日本新聞朝刊=

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