飲酒運転 危機感が薄れていないか

 飲酒運転を撲滅するために社会全体で対策を講じ、厳しい目を光らせ続けたい。

 同時に、運転する一人一人が飲酒への依存体質はないのか、客観的に見つめ直したい。ケースによっては、医療の力を借りることも重要である。

 福岡市の部長級職員が道交法違反(酒気帯び運転)容疑で現行犯逮捕された。基準値の2倍を超すアルコール分が検出されたという。

 福岡市職員が幼いきょうだい3人を死亡させた2006年8月の飲酒運転事故から12年近くになる。

 市は飲酒運転した職員の懲戒免職を原則とし、職員研修にも力を入れてきた。にもかかわらず、「またしても」である。3児死亡事故以降、飲酒運転が発覚した職員は実に14人目だ。

 全国的に悲劇は枚挙にいとまがない。中でも東名高速道で1999年に起きた事故は、社会に衝撃を与えた。加害者のトラック運転手は飲酒の常習者で、事故当日もサービスエリアなどで酒を飲んでいた。追突された車の幼児2人が死亡した。福岡市職員による死亡事故と同様に、理不尽極まりない。

 これらを教訓に法改正や官民一体の取り組みが進んだ。飲酒運転による死亡事故は昨年200件余で、東名高速道の事故当時の2割以下だ。それでも最近は減少幅が小さくなっている。危機感が薄れてはいないか。

 飲酒運転摘発者のうち約3割はアルコール依存症の疑いがあるという。依存症ならば、強い飲酒欲求や禁断症状が出る。

 福岡市によれば、逮捕された職員に普段、依存症の兆候などは見られなかった。今回の飲酒運転は、休みの日の午前中に起こした事故によって発覚した。

 こうした事例を教訓にどんな対策を実施すべきなのか。

 福岡県などは条例で摘発者に対しアルコール依存症の診断を義務付けている。併せて重要なのは、医学的に依存症とはいえないまでも、日常的な飲酒の習慣がある人の自覚ではないか。

 特筆すべきは、摘発者全体の6割近くは再犯という点だ。中には飲酒運転をしている意識がなかったり、事故は起こさないという独りよがりの自信を持っていたりする人もいるという。

 医療機関だけでなく、職場や家庭でも適切な助言を心掛けたい。市販のアルコール検知器の活用なども有効だろう。

 九州ではバスなどプロの運転手による飲酒運転も後を絶たない。言語道断だ。企業には徹底した対応が求められる。

 飲酒運転は重大な結果をもたらす悪質な犯罪である。あらゆる手だてを尽くし、社会全体で根絶への努力を重ねたい。

=2018/05/14付 西日本新聞朝刊=

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