カネミ油症50年 国は救済に全力を尽くせ

 国内最大の食品公害である「カネミ油症」が表面化して、今年で50年となる。国は、今なお苦しみから解放されない被害者の救済を急ぐべきだ。

 福岡、長崎両県など西日本を中心に、約1万4千人が頭痛や重い皮膚症状、爪の変形などを訴えた。そのうち国の認定患者は2300人余にすぎない。

 被害者は、カネミ倉庫(北九州市)製の米ぬか油を使った天ぷらなどの料理を食べた人たちである。油の製造工程でポリ塩化ビフェニール(PCB)などが混入し、そのPCBが熱で猛毒のダイオキシン類に変化していたのが原因だった。

 1980年代以降、法的責任を巡る司法判断や行政の患者認定基準は紆余(うよ)曲折を経てきた。このうち新認定基準による患者らがカネミ倉庫に損害賠償を求めた訴訟では2015年に最高裁で原告の敗訴が確定した。判決は同社の責任を認めた上で請求権が存続する期間(20年)を過ぎたとして訴えを退けた福岡高裁の判決を支持したためだ。

 事実上の門前払いである。根治する治療法は見つかっていないことは国も認めている。加えて、認定患者には心肥大や糖尿病などが一般成人より1・5~3倍も多く発症した、という厚生労働省のデータもある。最高裁の判断は、あまりにも形式的だったと言わざるを得ない。

 12年には議員立法で被害者救済法が成立した。健康調査支援金(年19万円)やカネミ倉庫からの給付金(年5万円)の支給などが柱だ。被害者側からすれば不十分極まりないだろう。

 厚労省によると油症は母親を介して胎児も発症する。いわゆる「油症2世」である。今後の対策で特に切実な救済対象だ。

 その指摘を受け、救済法は患者の同居家族を救済対象としたが、油症が確認された1968年の翌年以降に生まれた子は除外した。2世は全体で少なくとも1300人近いとみられる。

 救済法に基づき、必要な対策を検討する国とカネミ倉庫、患者による3者協議が年2回ペースで続いている。

 救済法は患者と家族の「人権尊重」をうたい、必要な医療を受ける環境整備や生活の質の維持向上を目指すとしている。

 法に基づき患者側は2世の救済や補償範囲の拡大を求めているが、国は難色を示しており、大きな進展はみられない。

 今年は富山県で発生したイタイイタイ病の公害病認定から50年でもある。水俣病などとともに共通するのは、経済や企業の論理が優先され、人の命や健康がおろそかにされてきたことだ。この教訓に立ち返って、何の落ち度もない被害者の救済に国は全力を尽くすべきである。

=2018/05/15付 西日本新聞朝刊=

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