加計問題 「うみを出す」約束を守れ

 今の政府や与党に、「加計(かけ)学園」が国家戦略特区制度を活用して愛媛県今治市に新設した獣医学部を巡る疑惑を解明する意思は本当にあるのだろうか。

 衆参両院の予算委員会で行われた集中審議を聞く限り、そんな疑問が浮かぶ。これでは政治と行政に対する国民の不信は解消されない。「うみを出し切る」と公言した安倍晋三首相には約束を守る責任がある。

 集中審議では、国家戦略特区を担当する内閣府地方創生推進室の藤原豊次長(当時)が2015年8月に、学園の車で今治市などを視察したことが明らかになった。便宜供与と受け取られかねない行為だ。

 共産党は、1校限定の新設方針が決まる2カ月以上前の16年10月、山本幸三地方創生担当相(当時)が同様に新設を希望した京都府に「1校しか認められない。難しい状況なので理解してほしい」と発言したとする文書を入手したと明らかにした。

 疑惑を巡る状況証拠は次々に判明する。先の参考人質疑でも柳瀬唯夫元首相秘書官は、加計学園関係者らと首相官邸で3度も面会したと明かし、異例の厚遇ぶりを改めて印象付けた。

 それでも首相は「面会は(事業者認定などに)全く影響を与えておらず問題ない」と言い張った。政府内からは「野党は同じ質問ばかりだ」として幕引きを図る声も出ているという。

 共同通信社の世論調査では、参考人質疑での柳瀬氏の説明について、75・5%が「納得できない」と回答した。獣医学部新設に関する政府の手続きが「適切だったとは思わない」との答えは69・9%に上った。

 文部科学省が内閣府から「総理の意向」として大学設置手続きを進めるよう求められた-とする文書が昨年5月17日に見つかって、あすで1年になる。

 疑惑解明が一向に進まないのは政府と与党の責任が大きい。文書を公表しない、疑問に正面から答えない、関係者の国会招致を拒む-。なぜ、そんな不誠実な対応を繰り返すのか。

 愛媛県の中村時広知事は、首相官邸での面会で柳瀬氏が「本件は首相案件」などと話したとする県職員作成の備忘録を公表していた。参考人質疑で柳瀬氏が「首相案件」発言を否定し、愛媛県職員との面会についても曖昧な答弁をしたため、中村知事は県職員が面会で受け取った柳瀬氏の名刺を公開した。

 両者の主張は明らかに食い違う。ならば、中村知事も参考人として国会に呼ぶのが筋だ。

 本人も応じる構えなのに、野党が求める知事の招致を与党は拒んだ。またも後ろ向きである。何か不都合でもあるのか。国民の疑念は深まるばかりだ。

=2018/05/16付 西日本新聞朝刊=

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