森友と日報 国政の根幹揺るがす背信

 政府はどこまで国会と国民を愚弄(ぐろう)するのか。許せない、あきれた、情けない-。さまざまな思いが渦巻く。これは、もはや「民主主義の危機」と言っても過言ではないのではないか。

 国民の共有財産である公文書を隠蔽(いんぺい)、改ざん、廃棄することで、政府は一体何を国民の目から遠ざけようとしたのだろう。全てを明らかにしない限り、国民の信頼は戻らない。

 ●答弁後廃棄の不実

 国政に対する不信感が極まるような出来事が、まるで示し合わせたかのように同じ日に重なった。

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り財務省が「廃棄した」と説明していた交渉記録の国会提出と、陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報隠蔽に関する防衛省の調査結果公表である。

 財務省が提出した交渉記録は約960ページに及ぶ。他に改ざん前の決裁文書約3千ページ、「本省相談メモ」と題する資料を提出した。

 どうして疑惑発覚から1年3カ月もかかったのか。「捜したら見つかった」では済まされない。

 驚くべき事実も明らかになった。交渉記録について担当の理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官が昨年2月24日に「廃棄した」と国会答弁した後、理財局は残っていた記録の廃棄を進めたという。

 あぜんとさせられる。公文書管理法が「民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と定める公文書を何と心得ているのか。

 財務省は佐川氏の答弁との整合性を図るためと説明する。では、佐川氏はなぜ廃棄したと答弁したのか。公になると困る内容が含まれていたからではないのか。

 それが決裁文書の改ざんで削除された安倍晋三首相の妻昭恵氏や複数の政治家の名前だったことは想像に難くない。交渉記録にも昭恵氏や政治家たちが登場する。

 財務省が敏感に反応したのは昭恵氏の名前だろう。佐川氏答弁の1週間前の2月17日、首相が国会で「私や妻が関係していたということになれば総理大臣も国会議員も辞める」と強弁したからだ。

 交渉記録には、昭恵氏付政府職員だった谷査恵子氏が2015年11月に「総理夫人の知り合いから照会があった」として国有地賃料減免について問い合わせをしてきたことなどが記載されている。

 学園の強引で執拗(しつよう)な値引き要請に苦慮していた財務省近畿財務局の対応が変化し、最終的に8億円もの値引き売却に応じたのは、こうした経緯の後である。

 財務省が決裁文書を改ざんし、交渉記録を廃棄しようとしたのは、昭恵氏が疑惑に関係したと思われる「痕跡」を全て消去しなければ-と焦ったからではないか。

 ●隠蔽体質は根深く

 一方、防衛省は計17人を減給1カ月などの処分とした。組織的背景はなく、担当者同士の意思疎通が十分でないことなどが原因と結論付けた。しかし、これで一件落着とするわけにはいかない。

 イラクの日報も昨年2月の国会で、当時の稲田朋美防衛相が「残っていない」と答弁していた。結果として、この答弁も国会を軽んじたと言われても仕方ない。

 日報には陸自が派遣されたイラク南部サマワについて「英国軍と武装勢力の間で銃撃戦」など緊迫した情勢が記載されている。「非戦闘地域」であるとした政府見解との落差を浮き彫りにした。

 日報についても「公にしたくない」との思惑が防衛省内で働いたことが、隠蔽につながった-との疑念が容易に浮かぶ。

 防衛省は各個人の責任で幕引きを図りたいのだろうが、日報の存在が判明しながら小野寺五典(いつのり)防衛相への報告は遅れに遅れた。稲田氏の日報探索の「指示」が曖昧だったとされることも、文民統制(シビリアンコントロール)の根幹に関わる重大な問題である。

 防衛省と財務省-問題の構図は何から何まで相似形だ。財務省が理財局の責任を強調して幕引きを模索している点も同様である。しかし、両省だけに限定した問題とはいえない。

 加計(かけ)学園の獣医学部新設を巡る首相官邸や内閣府の対応を含め、知られたくないことは国会にも国民にも隠し通そうとするのは安倍政権に共通する体質ではないか。

 「うみを出し切る」と言うなら首相も「参考人や証人は国会が決めること」と逃げずに真相解明の先頭に立つべきだ。麻生太郎財務相の責任を明確にすべきことは改めて言うまでもない。

 民主主義の根幹が揺らぐ深刻な事態である。政府、国会、各政党は一連の疑惑の徹底究明と再発防止へ待ったなしで取り組む時だ。

=2018/05/25付 西日本新聞朝刊=

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