財政健全化計画 正念場なのに先送りとは

 先進国で最悪の財政をどう立て直すのか。政府が、経済財政運営の指針「骨太方針」の原案で、新たな財政健全化計画案を提示した。

 2019年10月に消費税を10%へ引き上げる必要性を明記する一方、新たな借金に頼らず税収などで政策経費を賄えるかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の黒字化目標を、従来の20年度から25年度へ5年先送りした。

 歳出抑制の鍵となる19年度から3年間の社会保障費の伸びについても従来計画で明示していた数値目標の設定を見送った。

 財政再建に本腰を入れねばならない正念場なのに、真剣さが伝わってこない。その場しのぎの安易な手法を一体いつまで繰り返すつもりなのか。

 新たな健全化計画の焦点は財政再建の一里塚となるPB黒字化の時期がいつで、再建策にどこまで実効性があるかだった。

 17年度のPB赤字は約18兆5千億円に上る。これを黒字化する時期は昨年の衆院解散の際、来秋の消費税増税に伴う増収分の使途を教育無償化などに広げたことで、達成目標の「20年度まで」が先送りされていた。

 だが、PBの黒字化を急ぐことで、経済的ショックに対する財政対応の余地を回復し、持続可能な財政基盤を構築することは喫緊の課題だ。22年度からは団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、医療・介護費が急増する。今は良好な経済環境がいつまで続くかも不透明だ。

 25年度のPB黒字化はむしろ前倒しすべきで、もはや絶対に譲ってはならぬ一線である。

 そのため政府は、中間年の21年度に計画の進み具合を、国内総生産(GDP)に対する▽PB赤字の割合▽債務残高の割合▽財政収支赤字の割合-の3指標で点検するという。

 ただ、このうち債務残高と財政収支赤字の中間目標は来年度以降の歳出改革を織り込んでいない試算でも達成可能な甘いハードルだ。PBの改善が進まなくても、それを取り繕えるとの思惑が透けて見える。分母のGDPを増やせば歳出削減に踏み込まなくて済む便法にも映る。

 さらに気掛かりなのは、社会保障費の伸びに数値目標の設定を見送ったことだ。従来計画では伸びを16~18年度の3年間で1兆5千億円程度にすると明示し成果もあった。今回も削減に数値を設定して歳出拡大圧力に抗することが必要ではないか。

 従来、財政健全化は消費税率の引き上げ延期や、甘い経済見通し、その結果としての税収下振れ、再三の補正予算編成などで遅れに遅れてきた。その揚げ句の目標先送りである。いいかげんに悪循環を断つべきだ。

=2018/06/08付 西日本新聞朝刊=

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