犯罪被害者 救済制度の整備を着実に

 全国犯罪被害者の会が解散した。被害者家族と弁護士らが2000年に設立し、犯罪被害者基本法の制定などに尽力した。

 日本では戦後、冤罪(えんざい)事件への反省などから容疑者の人権擁護に力が注がれた。一方で被害者側には光が当たらなかった。

 その意味で、被害者の会の運動は画期的な地平を切り開いたといえる。解散の理由は、一定の目標を達したことや会員の高齢化だという。

 被害者救済制度の確立は道半ばである。3日の最終大会で会設立者の一人、岡村勲弁護士は「課題はまだある。次は国民の皆さんが立ち上がってほしい」と訴えた。真摯(しんし)に受け止め、救済制度の充実を目指す決意を新たにしたい。

 「被害者の権利は何一つ守られていない」-1990年代以降、被害家族から悲痛な声が上がり始めた。児童虐殺など凶悪事件が相次いで発生していた。

 犯罪に遭ったショックと、その後も続く肉体的・精神的な苦痛は、当事者でなければ容易には理解できない。だからこそ、被害者や家族を公的に支えていく仕組みづくりが必要だ。

 2004年の基本法制定を受け、被害者らが刑事裁判の法廷で被告に質問できるようになった。耐え難い被害感情を考慮し、殺人など凶悪犯罪の公訴時効は撤廃された。

 なお深刻なのは、損害賠償訴訟で勝訴しても、加害者に支払いの能力や意思がなく、泣き寝入りする被害者が多いことだ。事件で一家の大黒柱を失い、生活に困窮する遺族もいる。

 08年には、有罪判決後に同じ裁判所が刑事記録を調べるなどして損害賠償請求を審理する損害賠償命令制度が導入された。裁判を短期化し、被害者の負担を減らすのが狙いである。

 殺人事件などで数千万円の賠償が認められることもあるが、服役中の加害者に賠償能力があるのはまれだ。訴訟費用さえ被害者側が負担せざるを得ない場合もあり、被害者は理不尽さを重ねて味わうことになる。

 そうした点に着目したのが来年4月に基本的政策が施行される福岡県犯罪被害者支援条例である。損害賠償請求を適切に援助することなどを盛り込んだ。

 重要なことは、精神面のケアを含めて社会全体で総合的に支援する態勢である。

 大分県の犯罪被害者支援条例は、周囲の心ない言動による二次的被害の対策を柱とした。特に性犯罪被害者のケアが重要だ。想像を絶する苦痛と屈辱を被った上に、好奇の目や偏見にさらされる恐れがあるからだ。

 被害者の権利を尊重し、人間としての尊厳を取り戻せる環境を整えていきたい。

=2018/06/09付 西日本新聞朝刊=

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