G7サミット 目に余る米大統領の暴走

 カナダで開かれていた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が難航の末、首脳宣言を採択し、閉幕した。

 宣言は、「ルールに基づく国際的な貿易体制が極めて重要」「保護主義と闘う」と明記する一方、北朝鮮に対して圧力を維持することも盛り込んだ。

 一致して北朝鮮の完全非核化の重要性を確認したことは評価したい。問題はトランプ米大統領の対応だ。通商問題で強硬姿勢を貫いて他の6カ国との対立を先鋭化させ、会合の途中で退席しシンガポールの米朝首脳会談へ出発した。閉幕後、既に採択された首脳宣言をほごにしようとするなど暴走は目に余る。

 トランプ政権が今の強硬路線をとり続ける限り、共通の価値観で結束してきたG7の亀裂は深まり、報復関税の応酬や世界的な「貿易戦争」につながりかねない。大統領は国内支持者への見え透いたアピールより、国際秩序維持や世界経済混乱の危機にもっと敏感になるべきだ。

 G7の焦点は今回、一方的に保護主義的な通商政策を押し付ける米国を国際協調路線に引き戻せるか。そして北朝鮮の非核化に向けG7の連携をアピールできるか-だった。共同宣言を出せるかとの懸念すらあった。

 通商問題では、米国が今年3月、日本や中国などを対象に鉄鋼とアルミニウムに関税を上乗せする輸入制限を発動し、今月1日からは欧州連合(EU)とカナダ、メキシコも対象に加えたことに6カ国が猛反発した。 これに対し、トランプ大統領は「巨額の貿易赤字は受け入れられない」と譲らず、カナダは7月にも報復関税を発動する方針だ。米国は自動車の輸入制限も検討するなど、G7内の対立はさらに深まる恐れが強い。

 世界経済を揺るがす「貿易戦争」は断固回避すべきだ。貿易制限措置の応酬はどの国の利益にもならない。米国の自制、そして世界貿易機関(WTO)の改革で、公正な国際貿易体制の構築を急ぐことを求めたい。

 一方、北朝鮮問題への対応について、首脳宣言で「完全な非核化の重要性を強調する」と明記し、拉致問題に関しては「即時解決を求める」と強調した。着実な進展を目指したい。

 発足から40年余。G7が形骸化し、玉虫色の結論しか出せないという批判はある。しかし、G7は自由貿易や民主主義、人権尊重など共通の価値観に基づいて世界の政治経済を主導してきた。テロ対策や移民問題など対処すべき課題はなお多い。

 それでも米国はG7での孤立をいとわないのか。そうした姿勢こそが中国の鉄鋼過剰生産など通商問題の核心に迫れない理由であると米国は悟るべきだ。

=2018/06/12付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]