結愛ちゃん事件 悲劇を繰り返さぬために

 親から十分な食事を与えられず、暴行まで受けて死亡した-とされる東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃんは、両親への思いを切々とノートにつづっていた。

 「きのうぜんぜんできなかったこと、これまでまいにちやってきたことをなおす」「もうおねがい ゆるして」

 5歳の子どもが、親の意向に従おうと必死になり、許しを請い続けた。痛ましさに、胸が張り裂けそうになる。

 3月に死亡した時の体重は約12キロだった。5歳児の平均約20キロを大きく下回る。1食だけの日もあったという。顔には殴られた痕もあった。

 警察は保護責任者遺棄致死の疑いで両親を逮捕した。厚生労働省も検証に乗り出す。

 結愛ちゃんはどんな養育を受けていたのか。児童相談所や警察の対応に問題はなかったか。全容を明らかにし、再発防止の教訓にしなければならない。

 結愛ちゃんは、1月に東京都に転居した。それまで暮らしていた香川県で2度、児童相談所に一時保護されていた。

 その間、父親は結愛ちゃんにけがを負わせたとして、2度も傷害容疑で書類送検された。いずれも不起訴だったが、子どもにとって危険な家庭環境だったことは明らかだろう。

 転居後の2月、東京都の児相が家庭訪問したが、母親が拒否的な反応を示したため、結愛ちゃんには会えなかった。事件はその直後に起きてしまった。

 事態の切迫度に対する児相の判断に甘さがあったのではないか。香川県と東京都の児相の間で、どこまで丁寧な引き継ぎが行われたのか。きちんと検証すべきことは山ほどある。

 児相が虐待の兆候を把握しながら、警察に情報が伝わらず、最悪の事態に至るケースが後を絶たない。東京都も警視庁に情報を提供していなかった。

 高知県は虐待死事件を機に、児相が得た全ての虐待関連情報を警察と共有している。

 だが、全国的には、どんな事案について警察に情報提供するか-という基準すら定めていない自治体が少なくないのが実情だ。児相と警察の連携強化は、喫緊の課題といえよう。

 児相が対応する虐待事案は増加する一方だ。専門職の増員配置など、必要に応じた児相の態勢強化を急ぎたい。

 虐待の背景には、子育ての不安、家庭の貧困、地域からの孤立がある。行政と学校、医療、地域が連携し、そんな家族を見守り、支える姿勢も大切だ。

 虐待で子どもが命を失う事件が絶えない。悲劇をこれ以上繰り返さぬよう、国民全体で根絶への決意を新たにして、あらゆる手だてを尽くしたい。

=2018/06/14付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]