カジノ衆院通過 世論を厳粛に受け止めよ

 カジノ解禁が成長戦略や地域活性化に役立つのか。ギャンブル依存症が広がる心配はないのか-。さまざまな疑問や懸念は積み残されたままだ。

 野党や世論の反対を強引に押し切って、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案がきのう、自民、公明の与党と日本維新の会の賛成多数で可決され、衆院を通過した。

 問題点はほかにも山積している。犯罪資金の流入や資金洗浄(マネーロンダリング)▽周辺治安の悪化▽国会の審議対象にならず政令などで決める内容が331項目もあること▽入場客への金銭貸し付けを事業者に認める規定-などだ。

 法案が付託された衆院内閣委員会の論議はわずか18時間にとどまった。しかも政府の答弁は曖昧で、審議を通じて国民の理解が深まったとはいえない。

 野党側が審議の継続を求めたのは当然だ。にもかかわらず内閣委の委員長(自民党)は15日の委員会で、開会からわずか1分余りで採決を強行した。乱暴な手法と言わざるを得ない。

 共同通信社の世論調査によると、IR整備法案について「今国会で成立させる必要はない」と答えた人は69・0%に達した。実に約7割もの有権者が今国会での成立を求めていない。この現実を政府や与党は厳粛に受け止めるべきだ。

 与党はきょうまでの国会会期を延長して、この法案を何が何でも今国会で成立させる方針という。振り返ると、政府にIR整備法案の提出を促す「カジノ解禁法」も2016年の臨時国会延長のどさくさに紛れて強行的に成立させた。その際も、衆院内閣委の審議はたった6時間だった。

 無理を重ねて法律の成立を急ぎ、刑法が禁じる賭博罪からカジノを例外にするのはなぜか。誰かが損をする「不幸」が前提の成長戦略や地域活性化とは一体何なのか。誘致を目指す長崎県など地方自治体も、立ち止まってよく考えてほしい。

 公明党の対応も疑問だ。「カジノ解禁法」の採決では自主投票とし、山口那津男代表らが反対に回るなど賛否が割れた。

 ところが今回は、来年の統一地方選や参院選への影響を恐れ、選挙までの期間をできるだけ空けたいと、今国会中の成立を容認したとされる。

 選挙への影響を警戒するのは支持母体の創価学会に反対論が根強いためだが、それなら慎重な対応を貫き、自民党に熟議を働き掛けることが連立与党・公明党の役割ではないか。

 国民の疑問や懸念を払拭(ふっしょく)するには、参院でこそ徹底審議をする必要がある。政府も与党も強引な姿勢を改めるべきだ。

=2018/06/20付 西日本新聞朝刊=

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