参院6増法案 「良識の府」の看板どこへ

 党利党略にまみれた法案の成立を許してはならない。先議した参院は「良識の府」の看板を下ろしてしまったのか。

 参院の定数を6増する自民党の公選法改正案が、きのうの参院政治倫理・選挙制度特別委員会と本会議で公明党も賛成して可決され、衆院に送られた。

 選挙区間の「1票の格差」を是正するとの触れ込みだが、それは隠れみのにすぎない。比例代表を特定枠として4増し、2016年に「鳥取・島根」「徳島・高知」で導入された「合区」で議席を失う自民党議員を救済するのが主要な狙いだ。

 あまりにも露骨な党利党略であり、身勝手に過ぎる。野党が反対するのは当然だ。

 財政は厳しさを増し、人口も減っているのに、国会の「身を切る改革」に明らかに逆行する。定数を増やしても参院全体の経費が増えないよう節減を求める付帯決議も可決したが、法的な拘束力はない。

 そもそも、安易な定数増に国民の理解が得られるわけがない。共同通信社の世論調査でも、今回の公選法改正案に賛成は19・5%にとどまり、反対は59・9%に達した。

 特定枠は事前に定めた順位に従って当選者を決める「拘束名簿式」を採用する。現行の「非拘束式」と混在するため、有権者に混乱が生じる恐れもある。

 特定枠に自民党は合区対象県で選挙区に擁立できなかった県の候補を登載するという。目的のためには手段を選ばない。ご都合主義の極みではないか。

 一方、選挙区で定数を6から8に2増する埼玉選挙区は議員1人当たりの有権者数が最も多い。定数増は「1票の格差」是正につながるだろうが、格差是正の苦肉の策として自ら導入した合区は骨抜きにする。支離滅裂としか言いようがない。

 埼玉選挙区は毎回、公明党候補が激戦を繰り広げており、公明党に協力を求めるための定数増との見方もある。

 「1票の格差」を是正しつつ、地方の声も議席に反映するのは難題である。であるなら、同じ状況にある衆院も含めて抜本的見直しを図る以外にない。

 二院制における衆院と参院の役割と機能をどう分担するか、議員の選出方法はどんな形が適切か、少数意見を尊重するには何が必要か、定数や歳費をどうするか‐議論すべきことは山ほどあるのに、抜本改革はまたも置き去りにされた。

 どう考えても、延長国会で審議を急ぎ、慌てて採決するような法案ではない。衆院で自民党案をいったん廃案にして、与野党はもちろん、幅広い国民が「これならば」と賛同できる案をまとめるべきである。

=2018/07/12付 西日本新聞朝刊=

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