米朝協議 粘り強く非核化を軌道に

 6月12日の歴史的な米朝首脳会談から1カ月が経過した。会談がもたらした融和ムードとは裏腹に、首脳間の合意を受けて始まった米朝協議の行方には、早くも暗雲が漂い始めている。

 米国のポンペオ国務長官が6~7日に訪朝し、金英哲(キムヨンチョル)朝鮮労働党副委員長と協議した。トランプ米大統領と金正恩(キムジョンウン)委員長が首脳会談で合意した「完全な非核化」を実現するための手法や手順を詰めるのが目的だった。

 不可思議なのは協議後、米朝双方が発したコメントだ。ポンペオ長官が「ほぼ全てについて進展があった。生産的な協議だった」と評価したのに対し、北朝鮮外務省は「北朝鮮に対し強盗のように一方的に核廃棄を迫った米側の態度は遺憾」と酷評する談話を出したのである。

 結果的に言えば、協議では大きな成果は上がらなかったようだ。言い分の食い違いは、双方の主張がかみ合わず、非核化の具体的な行程表作りに入れなかったことを示している。

 こうした展開は、ある程度予想されていた。首脳会談でのトランプ大統領と金委員長との合意が漠然としており、中身を詰め切れていなかったからだ。

 完全な非核化には、まず北朝鮮が核・ミサイル開発の全容を申告し、その検証に基づいて核兵器の解体、国外搬出などを実施していく必要がある。そのための行程表作りが不可欠だが、協議の長期化は必至だ。

 不安要因は、北朝鮮の非核化の意思が本物かどうか、いまだに判然としないことである。米国は米韓合同軍事演習を中止するなど、信頼醸成に向けた姿勢を示している。北朝鮮もこれに呼応し、非核化へ向けた目に見える行動を取るべきだ。

 一方、米国が前のめりに見えるのも気になる。秋の中間選挙に向けてトランプ大統領が成果を急ぐあまり、不十分な非核化で満足するようでは困る。「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を譲ってはならない。

 国際社会では融和ムードが先行し、中国やロシアは北朝鮮への制裁緩和に前向きな動きを見せている。制裁を緩めれば北朝鮮の非核化への動機が弱まりかねない。緩和論議は早過ぎる。

 ポンペオ長官は訪朝の後、日本に立ち寄って日韓の外相と会談した。日米韓3カ国の外相は、完全な非核化実現まで北朝鮮への制裁を継続することを再確認した。妥当な判断である。

 協議が開始早々つまずいたからといって首脳会談前の緊張状態に戻すのはあまりにも短絡的である。元々容易に進む協議ではないことは米国も承知のはずだ。非核化の流れを後戻りさせないよう、焦らず粘り強い交渉で北朝鮮を動かすべきである。

=2018/07/13付 西日本新聞朝刊=

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