自民党総裁選 改憲ありきの議論危うい

 安倍晋三首相が自民党総裁選(9月7日告示、同20日投開票)への出馬を表明し、総裁連続3選・首相続投を目指す姿勢を明確にした。これで先に立候補を表明した石破茂元幹事長と一騎打ちになる構図が固まり、両氏による論戦が事実上、スタートした。

 「日本は大きな歴史の転換点を迎える。今こそ日本の明日を切り開く時だ」

 首相は26日、訪問先の鹿児島県での出馬表明で、こう語った。来年の皇位継承や2年後の東京五輪を見据えつつ、憲法改正を目指す意欲を強くにじませた言葉だった。

 そこで改めて問いたい。なぜ今、改憲を急ぐ必要があるのか。国政の現状に鑑みれば「立憲」の精神そのものが大きく揺らいでいないか。

 一連の森友学園問題などでは、憲法が「全体の奉仕者」と定める官僚が公文書の改ざんや隠蔽(いんぺい)に走り、国権の最高機関である国会を欺こうとした。その国会は「自民一党支配」によって責任追及を進められず、機能不全に陥っている実態が露呈した。

 文部科学省幹部の汚職や中央省庁の障害者雇用率を巡る不正など、さらに続く不祥事も見据えれば、今は国政の立て直しこそが急務である。

 にもかかわらず、首相は改憲に執着し、9条に自衛隊の存在を明記する改憲案を秋の臨時国会に提出したい、との意向を示している。

 これに対し、共同通信社の直近の世論調査では反対が49%に達し、賛成(36・7%)を上回った。背景には、安倍政権が独善的な憲法解釈の変更で、安全保障政策の転換に踏み切ったことなどへの不信感が横たわるとみられる。

 一方、9条の中で自衛隊を「戦力」と位置づける改憲を持論とする石破氏は、その考えを封印し、緊急事態条項の新設や参院選挙区の「合区」解消に向けた改憲を唱える。

 これらについても、現行法で対応が可能との反論がくすぶるなど、議論が深まっているとは言い難い。

 石破氏が「正直、公正」のスローガンを掲げたことに対し、党内で「首相への個人攻撃だ」と批判する声が上がった。それも残念だ。首相の政治姿勢が問われるのはむしろ当然の流れではないか。

 政治家が憲法と向き合い、国民とともに国政の在り方を論じ合うことは重要だ。ただ、そこでは国民主権を柱とした憲法の精神が生かされているか、国の姿を真摯(しんし)に見つめることが肝要だろう。「改憲ありき」の議論では危うい。

=2018/08/28付 西日本新聞朝刊=

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