子どもの自殺 SNSから具体的支援へ

 九州の一部の学校で夏休みが終わり、新学期が始まった。生活のリズムが急に変わる。いじめなどを理由に学校に行きたくない子どもには、大きなストレスがのしかかるだろう。

 9月1日をピークに、8月の終わりから9月初旬は、子どもの自殺が多発する時期である。家族や教職員は、子どものささいな変化を見逃さないようにしてもらいたい。

 いじめなどに対応する相談窓口は長年、電話が中心だった。ところが、インターネットの普及に伴い、若者は電話をあまり利用しなくなっている。

 総務省の昨年の調査で、若者のコミュニケーションは電話による通話ではなく、圧倒的に会員制交流サイト(SNS)中心になっている実態が明らかになった。10代の8割超がLINE(ライン)を利用していた。

 長野県が昨年9月に2週間、LINEによる悩み相談を初めて実施したところ、電話相談の年間対応件数の2倍を超える相談が寄せられた。SNSを使うと、相談に対するハードルが下がることは間違いない。

 鹿児島県は9月11日まで、中学校など約20校の生徒を対象に、LINEで悩み相談を受け付けている。熊本市は6日まで、市立中高などの生徒を対象に受け付けている。

 文部科学省が補助事業を始めたこともあり、多くの自治体がSNS相談に乗り出した。まずは、この新たな取り組みを全国に広げたい。

 長野県などの実施例を通じ、多くの課題も浮上している。

 音声や表情といった情報がないため、相談員は相手の心理状態を把握しにくい。状況がよく分からないまま、交信が途中で途絶えてしまうこともあった。

 電話や対面による相談といった次のステップにつなぐ難しさも、明らかになっている。

 各地で実績を積み上げ、課題を検証することが肝要だ。SNSに適した相談技術の開発や、具体的な支援につなぐ仕組みづくりも課題といえよう。

 日本の自殺者数は年間3万人を超える状況を脱し、減少傾向にあるが、児童生徒を含む若者は横ばいで推移している。

 若者のライフスタイルに親和性が高いとはいえ、SNS相談はあくまで受け身の自殺予防策の一つである。いじめなどを早期発見して対処するため、学校や教職員は「SOSの出し方教育」を推進する必要がある。

 子どもは悩みを周囲に隠し続け、最悪の結果に至ることがある。しかし、生活の折々で、小さなSOSを発しているはずだ。兆候を早く察知するため、周囲の大人が子どもをそっと見守る風潮を社会に広げたい。

=2018/08/29付 西日本新聞朝刊=

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