ノーベル賞受賞 基礎研究への支援充実を

 かつて日本人には縁遠かったノーベル賞の受賞が、21世紀に入り「恒例」と呼べるほど相次ぐようになった。

 今年は、がんの免疫治療薬開発に貢献した本庶(ほんじょ)佑(たすく)京都大特別教授に、医学生理学賞が贈られることが決まった。日本人の医学生理学賞受賞は、2016年の大隅良典氏=福岡市出身=に続く快挙である。

 「人の役に立ちたい」という志に貫かれた、長年にわたる地道な研究活動に心から拍手を送り、受賞を祝福したい。

 本庶氏は、異物を攻撃する免疫反応にブレーキをかけるタンパク質「PD1」の存在を突き止めた。このPD1の働きを抑えるがん治療薬として開発されたのが、画期的な免疫治療薬「オプジーボ」である。

 がん治療に新たな扉を開き、患者に福音をもたらす歴史的な研究成果といえる。

 免疫治療は、手術、放射線療法、抗がん剤などの化学療法に続く「第4の治療法」として期待されるが、現状では効果のある患者が限られ、薬価が高額といった課題がある。治療の可能性をさらに広げ、多くの人が恩恵を受けられるよう、国内の研究と開発を加速したい。

 昭和の時代にノーベル賞に輝いた日本人は7人だが、平成はこれで19人となった。うち18人は自然科学の分野だ。しかし、元号が改まる来年以降も受賞ラッシュが続くかどうか、疑問を呈す研究者が多い。

 重要論文数の国際比較で、日本は10年ほどの間に大きく順位を下げた。博士課程に進む学生も減少傾向にある。

 背景の一つに、大学の人件費や自由な研究に充てる国の運営費交付金の削減がある。

 人件費抑制のあおりも受け、非正規ポストで働く若手研究者が増えた。安定して研究に取り組む環境が失われつつある。雑務が増え、研究時間も減っているとの指摘もある。

 国は、軍事分野も含め、イノベーションにつながる研究を選択して補助する、競争的資金制度を拡充している。成果がすぐに実用化に直結するとは限らない基礎研究の分野は裾野が狭まり、先細りが懸念されている。

 本庶氏は日本の基礎研究の未来に対する不安を語り、賞金を後進のための基金として活用する意向を表明した。大隅氏も同様の懸念から基金を創設している。だが、こうした若手研究者の育成は本来、国が責任を持って力を入れるべきだろう。

 イノベーションは、目先の成果に追われない自由な基礎研究から生まれる。「科学は未来への投資」という本庶氏の言葉を政府はもとより、国民全体で重く受け止める必要がある。

=2018/10/05付 西日本新聞朝刊=

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