飲酒パイロット 法整備して厳しく対処を

 航空機のパイロットによる飲酒不祥事が相次いで発覚している。全国で展開される車の飲酒運転撲滅運動を、人ごとのように眺めていなかったか-。そんな批判は免れない。

 国土交通省が調査し、20日に結果を公表した。定期航空便を運航する国内25社のうち、乗務前に過度な飲酒が発覚したケースが2013年以降で37件に上った。4社は検査時に飲酒検知器を使っていなかったという。

 飲酒不祥事が表面化したのは先月下旬、ロンドンの空港で日本航空の副操縦士が逮捕されたのがきっかけだ。乗務直前、呼気から英国の基準の10倍に当たるアルコールが検出されたという。自社の検査では必要な量の呼気を吹き掛けずすり抜けた。驚くべきモラル喪失と言うほかない。全日本空輸グループでは機長の飲酒が露見した。

 乗務員の飲酒を見逃してきた会社の責任は重い。日航の赤坂祐二社長は「紛れもなく経営の責任だ」と謝罪した。ANAホールディングスの片野坂真哉社長も「安全の堅持と再発防止に努める」と述べた。

 両社は、飲酒を禁止する時間帯を乗務開始の12時間前から24時間前にすることや、検査時のスタッフ立ち会い、検査機の更新など再発防止策を決めた。

 日本には今なお飲酒に甘い風土が残ると言わざるを得ない。国内法にも不備が目立つ。航空法などは飲酒の影響がある状態での乗務を禁じる一方、アルコール検査は義務付けていない。アルコール濃度には統一基準がなく、航空各社が独自に検査方法や基準値を定めてきた。

 近年は業務の効率性が優先され、パイロットの休養時間が短くなるなど労働環境の変質はあろう。ただ、ストレスの緩和といった酒の効用に対する誤った思い込みは正す必要がある。一定量以上の飲酒は睡眠の質を低下させ、眠りを浅くする。

 飲酒の常習性も問題だ。場合によってはアルコール依存症を疑って掛からなければなるまい。自動操縦の進歩もあって任務を甘くみていないか。どんな職業であれ、自己管理はプロとして基本中の基本ではないか。

 車の飲酒運転を巡っては、福岡市職員による3児死亡事故(2006年)を機に、全国で撲滅の動きが加速した。昨年の飲酒運転死亡事故は200件余で当時の3割にまで減った。

 日航機の羽田沖墜落事故(1982年)や御巣鷹山墜落事故(85年)の記憶は生々しい。原因は異なれど、航空機事故がどれほどの大惨事になるか、社会全体で教訓としてきたはずだ。

 パイロットには厳しい規範が必要だ。法令の整備を急ぎ対処したい。

=2018/11/24付 西日本新聞朝刊=

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