「いずも」空母化 専守防衛の原則逸脱する

 政府は長期的な防衛政策の指針となる「防衛計画の大綱」の改定に向けて、自民、公明両党のワーキングチームに骨子案を示し、了承を得た。来週にも閣議決定する方針だ。

 防衛大綱とは、政府が防衛装備(兵器)や部隊編成の整備目標を定めるため、向こう10年程度の安全保障政策の基本認識や優先課題を示す指針である。

 2014年からの10年を念頭に作成した現在の大綱を前倒しで見直すのは、中国の軍備拡大や北朝鮮の核・ミサイル開発など、日本周辺の安全保障環境の変化に対応する狙いがある。

 新大綱で最も注目されているのは、海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を改修し、事実上の空母として運用できるようにする構想を明記することだ。

 現在ヘリコプターを搭載している「いずも」を、米国製戦闘機F35Bが発着できるよう改修する。F35Bは短い距離で離陸可能で、垂直着陸もできる。政府はF35Bを米国から大量購入する方針だという。

 空母の機能を簡単に言えば「動く航空基地」である。自国の基地からは遠過ぎる場所でも、空母で近づき搭載機で攻撃することができる。相手領域に直接打撃を与えることが可能だ。

 政府は従来、「性能上相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる攻撃的兵器の保有は、自衛のための必要最小限度の範囲を超えるので許されない」との見解を示し、その例として「攻撃型空母」を挙げてきた。「憲法の趣旨である専守防衛の枠を超える空母は保有できない」と解されている。

 今回の大綱改定による「いずも」の空母化は、専守防衛という戦後の安全保障の大原則を逸脱する恐れが極めて強い。

 政府は、F35Bを常時搭載しないことから「『攻撃型空母』には当たらない」と主張する。さらに空母でなく「多用途運用護衛艦」と呼ぶことで「専守防衛逸脱」の批判をかわそうとする構えだ。込み入った定義や用語の言い換えで本質的な政策転換を覆い隠すのは、安倍晋三政権の得意技である。

 費用面からも空母化には疑問が生じる。空母を安定的に運用するには、最低3隻が必要とされる。空母の運用費は高額であり、将来的に3隻ともなれば防衛費を圧迫しかねない。

 米国と中国との覇権争いが激しさを増す中、日本が対中国の軍拡競争に参加していけば、東アジアの緊張は高まり、防衛費も際限なく膨れ上がる。

 憲法の趣旨に反する恐れが強く、費用対効果も不明確な「空母」導入の必要が本当にあるのか。十分な議論が必要だ。なし崩しの原則変更は許されない。

=2018/12/13付 西日本新聞朝刊=

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