憲法の価値 平成の遺産として次代へ

 平成最後の召集となる通常国会が28日、開会する。6月26日までの会期の途中に皇位が継承され、新元号へと時代をまたぐ節目の国会となる。

 平成の歩みを、どう総括するか。キーワードを一つに絞るのは難しい。少子高齢社会、災害列島、グローバル経済、デジタル革命…。過酷な試練と変革の波に洗われた30年である。

 しかし、何よりも印象深いのは、国家の礎である新憲法の理念が体現されたことだろう。

 「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに心から安堵(あんど)しています」

 天皇陛下が昨年12月、誕生日に当たって述べられた言葉も、同じ文脈で読み解ける。

 国民主権を根幹とする憲法の下で、天皇が最初から国民統合の象徴として即位し、「不戦」の国是が貫かれた-。日本の近現代史上、特筆すべき時代が平成である。

 他方、平成は憲法が脅かされた時代でもある。防衛庁が省に格上げされ、集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法の制定を軸に、防衛予算・装備の拡充などが一気に進んだ。

 北朝鮮や中国の脅威には一定の対処が必要だ。しかし、一連の施策は十分な議論がないまま一内閣の閣議決定などによって推進された。その結果、専守防衛を柱とする“国のかたち”は変質している。憲法に照らすと、全体の奉仕者とされる官僚の不祥事の続発も目に余る。

 憲法を巡ってはさまざまな議論が生まれ、かつてなく国民の関心が高まっている。この動きも前向きに捉えたい。

 言うまでもなく、憲法は国家権力を縛るものであり、その在り方について判断を下すのは、あくまで私たちである。

 安倍晋三政権は発足以来、憲法改正の必要性を唱え、現段階で9条に自衛隊の存在を明記する案などを提示している。ただ、賛意は広がっていない。国内外の情勢は確かに変化しているものの、今なぜ改憲なのか。安倍首相の姿勢は独善的で説得力に乏しい。それを国民に見透かされた結果ではないか。

 通常国会の場でも議論があろう。仮に改憲を目指すのであれば安易な「解釈改憲」を禁じ、霞が関を監視する機能を強化するなど国家権力を一段と縛る必要性も論じるべきだろう。

 国会の衆参両院で改憲に前向きな勢力が3分の2を占める中で、今夏には参院選が控えている。「1票」の行方が憲法論議にも大きな影響を与えよう。

 その意味でも今年は節目の年である。平成の歩みを俯瞰(ふかん)して「憲法の価値」をいま一度真摯(しんし)に見つめる。その意義を語り継ぎ、次世代への遺産としたい。

=2019/01/22付 西日本新聞朝刊=

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