統計不正報告 これで幕引きは許されぬ

 まるで締め切りに追われたかのように、不十分な調査に基づく拙速な結論だった。

 その調査報告を「待ってました」と言わんばかりに、事務次官や歴代幹部を含む22人を大量処分した厚生労働省の「手際の良さ」が、かえって際立つ。

 毎月勤労統計の不正調査問題で、厚労省の特別監察委員会が調査報告を公表した。総務相の承認を受けた調査計画と異なる手法の調査は「統計法に違反する」と明快に指摘しながら、焦点だった組織的な関与や隠蔽(いんぺい)は「認められなかった」という。

 報告書によれば、従業員500人以上の事業所は全数調査する決まりなのに、東京都分は2004年から抽出調査へ変更されていた。不正調査を容認する事務取扱要領は統計部局トップの部長名で決裁されていたが、調査計画の変更手続きをせず、公表もしていなかった。

 その後、不正を改める機会は何回もあったのに、なぜか見過ごされた。例えば17年には局長級の政策統括官が担当者から不正調査の報告を受けたのに修正を指示しただけで放置した。

 報告書は総じて、関係者聴取に基づく事実関係は述べても、その動機や背景には踏み込み不足が目立つ。「意図的とまでは認められない」「不適切な対応だったと言わざるを得ない」といった表現で済ませている。

 隔靴掻痒(そうよう)の感は否めない。内部調査の限界と言えばそれまでだが、特別監察委が初会合を開いたのは17日だ。報告書をまとめたのは2回目の22日である。たった6日間で2回の会合を開いただけで、十数年にわたって時の政権と国民を欺いてきた不正の全容を解明するのは、無理だったと言うべきだ。

 厚労省をはじめ政府としてはきょう衆参両院で開かれる厚生労働委員会の閉会中審査や28日召集の通常国会をにらみ、調査報告と関係者の処分を済ませ、幕引きを急ぎたいのだろう。

 しかし、そうした思惑で動くこと自体が、今回の問題に対する認識不足を象徴している。

 国内はもとより国際的な信頼に関わる基幹統計の一つがゆがめられ、長年その不正がまかり通ってきた。

 重大なのは「官の違法行為」によって、あってはならない雇用保険や労災保険などの過少給付が生じ、延べ約2千万人もの国民が損害を受けたことだ。

 その被害者の多くが、心ならずも失業したり、病気やけがで働けなくなったりして困難に直面した被保険者であることを考えれば、不正の罪深さは計り知れない。今回の報告と処分で幕引きは許されない。国会と与野党は徹底解明のスタートラインに立ったと認識すべきだ。

=2019/01/24付 西日本新聞朝刊=

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