児童虐待防止 DV対策との連携強化を

 全国の警察が虐待された疑いがあるとして児童相談所に通告した子ども(18歳未満)の数が2018年、初めて8万人を超えた。前年より約2割増え、過去5年でほぼ3倍増となっている。社会的関心が高まり、地域からの通報が増えたことが背景にあるとされるが、人知れず苦しんでいる子どもは、まだ、たくさんいるに違いない。

 痛ましい虐待死事件が続く。官民が一体となって防止と保護の対策を拡充し、一人でも多くの子どもを救う必要がある。

 通告で最も多かったのは、暴言などの心理的虐待で、全体の7割の約5万7千人に上った。身体的虐待は約1万5千人、ネグレクト(育児放棄)などの怠慢・拒否が約7700人、性的虐待が約260人と続く。

 心理的虐待の中で特に増加が目立つのは、子どもの目の前で配偶者に暴力を振るう面前ドメスティックバイオレンス(DV)である。家庭内の暴力事案に対応した警察が、積極的に通告するようになったという。

 身体を傷つけないとはいえ、軽く見ることはできない。DVを目の当たりにして育った子どもは、心に深い傷を負う。両親の間で振るわれる暴力に「自分は何もできない」という無力感や罪悪感を抱え、心の成長に暗い影を落とすこともある。長期的な心のケアが欠かせない。

 暴力の矛先は、配偶者だけでなく、子どもに直接向かうこともある。内閣府の調査では、DVが繰り返しあった家庭の約3割で、子どもも身体的暴力などの虐待を受けている。DVが確認された段階で、子どもは面前DVにとどまらず、身体的虐待の高いリスクにさらされていると考えるべきだ。

 警察が面前DVを積極的に通告するようになったことは評価できる。とはいえ、肝心なのはそれを被害者や児童の救済に結び付けることである。

 千葉県野田市の女児が自宅浴室で亡くなり、両親が傷害容疑で逮捕された事件では、母親が父親にDVを受けていたとされる。家族が以前暮らしていた沖縄県糸満市には具体的なDV情報が親類から寄せられていた。情報は転居先の千葉県に伝えられたというが、具体的な母子支援には結び付いていない。

 DVと児童虐待は、どちらも暴力による家族の支配と言えるが、相談窓口も対応する機関も異なるケースが多い。各自治体はそれぞれの対策の連携を進めているが、十分とは言い難い。

 家庭内の暴力に関する情報を自治体と児童相談所、警察などが広く共有する。速やかにリスクを判定し、見守りによる家族支援や保護につなぐ。そんな仕組みづくりを急ぐ必要がある。

=2019/02/17付 西日本新聞朝刊=

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