統一地方選開幕 「民主主義の学校」再建を

 福岡、大分両県など11道府県の知事選がきょう告示されるのを皮切りに、第19回統一地方選がスタートする。住民に身近な地方自治体の首長や議員を全国規模で選ぶ4年に1度の大型選挙である。

 人口減少と少子高齢化が進行する一方で、東京一極集中は一向に是正されない。厳しい現実に地方はどう立ち向かうか。

 私たちが暮らす九州の地方自治を見つめ直し、確かな将来を自分たちで選択する機会としたい。

 ●2040年を見据え

 知事選は4年前の前回、佐賀県と東京都が外れ、10道県だった。今回は大阪府が新たに加わる。

 「大阪都構想」の実現を掲げる大阪維新の会が、府市トップの同時辞職で入れ替わって出馬するダブル選に打って出たからだ。

 11知事選のうち、福岡、福井、島根、徳島の4県は保守分裂の選挙戦となる。与野党対決型の知事選は北海道だけだ。

 安倍晋三首相の長期政権を支える巨大与党の自民党と、分裂を繰り返して再建途上の野党という国政の「1強多弱」を反映した図式ともいえよう。

 大阪府知事選は24日告示の大阪市長選とともに「維新」対「反維新」という独特の構図となる。

 福岡など4県で保守が分裂した事情や背景はさまざまだが、対決型の知事選が増えること自体は、有権者の選択肢を広げる効果が期待できる。そのためにも、保守陣営のしがらみや内部対立の域を脱し、地域づくりの建設的な政策論争を繰り広げてもらいたい。

 人口減少と少子高齢化への対応は国家的な課題だが、真っ先に深刻な影響を受けるのは住民生活の現場に向き合う地方自治体だ。

 団塊の世代に加えて団塊ジュニア世代も65歳以上の高齢者となる2040年は、人口減少が深刻化し高齢者人口がピークを迎えるとされる。「2040年問題」だ。政府は昨夏、第32次地方制度調査会を発足させ、この問題に対応する地方行政の在り方を諮問した。

 焦点は「圏域」という考え方だ。政府は複数の市町村で構成する「圏域」を新たな行政主体として法制化し、行政サービスを提供する仕組みを打ち出している。

 基本理念は、個々の市町村が全分野を手掛ける「行政のフルセット主義」からの脱却だ。そこには「現状のまま地方自治体が存続できるとは到底思えない」という強い危機感がある。

 だが、「平成の大合併」をくぐり抜け、政府が主導する「地方創生」に取り組んできた自治体側には「また上からの号令か」「自治体の概念が変質してしまわないか」といった反発も根強い。

 ●空洞化を防ぐために

 地方の将来像をどう描くか。その際、効率性や採算性の尺度はどこまで有効なのか。「暮らしやすさ」や「住み心地」といった満足度、「地域の伝統や個性」のような価値観はどう勘案すべきか。

 一連の問題意識は結局、「自治とは何か」というテーマに行き着く。日本国憲法に書き込まれた「地方自治の本旨」をどう読み解くか-と言い換えてもいい。

 「地方自治は民主主義の学校」といわれる。英国の歴史学者・政治家、ジェームズ・ブライスの有名な言葉だ。地方自治が危機だとすれば、それは「民主主義の危機」と言っても過言ではあるまい。

 その状況は、投票率の低下や無投票当選の増加に端的に表れている。前回の統一選で10道県知事選の平均投票率は約47%で、初めて5割を割り込んだ。1951年に過去最高を記録した知事選の平均投票率が約82%だったことを振り返れば、隔世の感は拭えない。

 共同通信の集計(9日現在)によると、今回の41道府県議選は総定数2277の29・0%に当たる661議席が無投票となる見込みだ。過去最高だった前回の21・9%を更新する可能性が高い。

 投票率の低下と、有権者の審判を素通りする無投票当選の増加は議会制民主主義の空洞化を招く。地方議員のなり手不足も含め、「民主主義の学校」を再建する取り組みが待ったなしで必要だ。

 今回、特に注目したいのは女性の進出である。政党に議員選で男女の候補者数を均等にするよう促す「政治分野の男女共同参画推進法」が昨年施行された。本紙の調査によれば、九州7県の233市町村議会で女性議員のいない議会は4分の1の60議会に及ぶ。「女性ゼロ議会」はどこまで減るか。

 また今回は選挙権年齢が18歳に引き下げられて迎える初の統一選でもある。声を大にして若者の地方政治参加を求めたい。あなたの未来を切り開く地方選挙だから。

=2019/03/21付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]