東京五輪 当初の理念を忘れたのか

 2020年東京五輪招致疑惑で、フランス司法当局の捜査対象になっている日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が、任期満了となる今年6月27日で退任すると表明した。国際オリンピック委員会(IOC)委員からも退くという。

 竹田氏は世代交代を理由に挙げ、改めて潔白を主張した。しかし、疑惑に関する説明責任を回避する姿勢などが批判を浴び、退任に追い込まれた形だ。

 五輪・パラリンピックを来夏に控えた中、JOCトップが退く異例の事態で、東京大会のイメージは大きく損なわれた。JOCは自ら疑惑の再調査に乗り出すなど、国内外の信頼回復に努めるべきだ。

 五輪を巡っては国、大会組織委、東京都の3者の姿勢も問われている。「復興五輪」「コンパクト五輪」という当初の理念と現実の乖離(かいり)が目立つからだ。

 今年1~2月に共同通信が、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県の42市町村長に行ったアンケートでは、復興五輪の理念は「浸透していない」「どちらかというと浸透していない」との回答が半数を占めた。五輪を通じて世界各国からの支援に感謝を示し、復興をアピールする-との理念はあいまいで、「言葉だけが独り歩きしている」との声が少なくない。

 首都では競技施設の建設ラッシュなどで好況が続くが、被災地では原発事故に見舞われた福島を中心に、避難生活者がなお5万人余に上る。原発の廃炉作業や放射性物質の最終処分の見通しも立っていない。

 そうした状況下で、復興は進展したと言えるのか。五輪は復興に資するのか。被災地では戸惑いや疑念が横たわり、世界に向けては「むしろ震災の傷痕の深さや復興の困難さを伝えるべきだ」との指摘もある。

 一方、大会の直接経費は昨年12月時点の組織委試算で、1兆3500億円(組織委と都が各6千億円、国が1500億円を負担)とされている。これにも不信の目が向けられている。

 国の負担額が会計検査院の検査結果と食い違い、関連経費を含めた総額は3兆円に上るとの観測があるためだ。

 五輪を成功に導くには、こうした不透明感を払拭(ふっしょく)すること、そして被災地の復興を忘れないことが何よりも肝要だ。

 五輪の運営では全国から集まる10万人のボランティアが汗を流す。加えて九州を含め400近い自治体が、参加国・地域の選手、市民らと交流する「ホストタウン」の役割を担う。

 五輪が東京だけのものではなく、全国の人々の協力、取り組みの上に成り立つことも、忘れてはならない。

=2019/03/22付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]