児童虐待対策 児相の体制強化が必要だ

 深刻化する児童虐待への対策を強化する児童福祉法などの改正案の審議が国会で始まる。

 親による体罰が禁じられる。福岡県筑紫野市の虐待事件で逮捕された母親らは、「わがままをいわない」といった誓約書を女児に書かせ、守らないと水風呂に入れる虐待を繰り返したとされる。こうした「しつけ」の名を借りた虐待を根絶するためにも、一刻も早く体罰禁止の風潮を社会に根付かせたい。

 改正案のもう一つの柱は防止体制の強化である。児童相談所の機能強化が盛り込まれたが、増える一方の児童虐待に対応するには、不満が残る内容だ。

 児相が対応した児童虐待の件数は1999年度の約1万2千件から増え続け、2017年度は約13万4千件に上る。1カ所の児相が対応する件数も、1人の職員の負担も限界に達していると言わざるを得ない。

 既に中核市も児相を設置できるようになっているが、整備は進んでいない。今回の法改正に向けた議論では、設置を義務付ける意見もあったが、自治体側の反発もあり、改正法施行後5年をめどに設置できるよう、政府が施設整備や人材確保・育成を支援することで落ち着いた。

 こうした支援は、これまでも自治体側が求めてきたものだ。法改正後、政府は速やかに具体的な支援策を示す必要がある。

 子どもの命を守るには、強制的介入による一時保護が必要なケースもある。一方で現場には、介入することによって親との信頼関係が損なわれ、かえって家族への支援を難しくするとの声がある。このため改正案は、職員を介入担当と支援担当に分ける機能分化を打ち出した。

 方向性は理解できるが、機能を分けさえすれば介入が容易になるという単純な話ではない。それぞれの機能に応じた専門知識と技術を持つ職員の確保と育成が不可欠だ。その人的余裕が、今の児相にあるのか。

 政府は児童福祉司の増員配置を進めているが、現場には不十分との声が広がっている。一般職として採用され、スキルを身に付ける間もなく短期間で異動する職員も少なくない。政府はマンパワー拡充と職員の質の向上に本気で取り組むべきだ。

 改正案には、児相と警察、ドメスティックバイオレンス(DV)対応機関との連携強化も明記された。児童虐待の通報が急増している現状を踏まえれば、市町村を含め多様な機関が協働し、虐待を捉える「網」の目を細かくするとともに、多方面から家族を支援することが大切であることは言うまでもない。
 とはいえ、虐待対策の要はやはり児相である。政府は抜本的な体制強化に取り組むべきだ。

=2019/03/26付 西日本新聞朝刊=

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