外交儀礼の色彩はあっても、胸に響く光景だった…

 外交儀礼の色彩はあっても、胸に響く光景だった。2011年5月、来日した中国と韓国の首脳は真っ先に東北を訪問して黙とうをささげ、避難所で暮らす人々を見舞った

▼当時の温家宝首相と李明博大統領。東日本大震災の発生からわずか2カ月後、東京で「日中韓サミット」が開催された時のことだ。震災直後に援助隊を派遣してくれたのも中韓両国だった

▼宮城県では水産会社の役員男性が中国人研修生20人を高台に避難させ、自らは津波にのまれて亡くなった。中国で広がった感動と哀悼の声。温首相は男性への謝意と日中関係の大切さを語ることも忘れなかった

▼8万人超が犠牲になった中国の四川大地震。今日で発生から10年が過ぎた。この時は日本の援助隊が懸命の活動を続けた。2年前の熊本地震では恩返しとして中国側で復興支援の輪が生まれた

▼東京のJR新大久保駅で01年に起きた事故も頭に浮かぶ。ホームから転落した日本人を助けようとした韓国人留学生らが命を落とした。それを題材にした映画「あなたを忘れない」は日韓共同で製作され、感銘の輪を広げた

▼命の重さに国境はない。まして一衣帯水の隣国関係である。今週、東京で7年ぶりに開かれた日中韓サミット。外交上の綱引きを投影しながらも「共同宣言」には未来志向の協力をうたう文言が並んだ。3カ国の国民の間で紡がれた尊い出来事も改めて書き記しておきたい。

=2018/05/12付 西日本新聞朝刊=

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