〈こすいやつ山よ川よと呼んで逃げ〉という江戸川柳がある…

 〈こすいやつ山よ川よと呼んで逃げ〉という江戸川柳がある。赤穂四十七士が主君の敵(かたき)、吉良上野介を討つ「忠臣蔵」が題材だ

▼吉良邸に討ち入った赤穂浪士たちは、敵味方を区別する合言葉を決めていた。「山」と言えば「川」。これを吉良方の者がこっそり聞いていた。合言葉を連発して浪士たちを欺き、まんまと逃げ延びた。なんてずるいやつなんだ-

▼浪士びいきの江戸っ子は、浅野内匠頭をいじめたのに、おとがめなしの吉良は「こすい」と思ったのだろう。見方を変えれば、吉良を守ろうと命懸けで戦った家臣たちも「忠臣」といえようが

▼さて平成の「忠臣蔵」である。政治家に「誠心誠意、お仕えする」官僚たちの物語。〈こすいやつ記憶にないと言って逃げ〉。もり、かけ、日報、セクハラ…。都合の悪いことは「記憶にない」「記録はない」と合言葉のように連発。新たな証拠や証言が出ても、あれやこれやと言い訳して逃げ延びようと

▼権力者を忖度(そんたく)する忠臣が不都合を「お蔵入り」にしようとする三文芝居。主役の殿は「(部下は)正直に答えた」「問題ない」と開き直って見えを切る。らちが明かない舞台を見せられる国民はもやもや。木戸銭ならぬ、税金返せのやじが飛びそうだ

▼芝居の吉良は炭小屋に隠れていた。〈吉良びやかなるお寝間着が炭だらけ〉。きらびやかな1強や高級官僚も疑惑の炭だらけ。このまま済みにはできぬ。

=2018/05/16付 西日本新聞朝刊=

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