南フランス・プロバンスは今ごろ、鮮やかな紫色に染め上げられていよう…

 南フランス・プロバンスは今ごろ、鮮やかな紫色に染め上げられていよう。一面に広がるラベンダーの花畑。美しさだけでなく、癒やしの香りにも人は引き付けられる

▼古くから薬草として珍重されたラベンダーの花言葉は「沈黙」「疑惑」。沈黙は興奮を抑えて落ち着かせる効果があるから、疑惑は怪しいほどに強い香りを放つからとか

▼南フランスは中世の予言者ノストラダムスの故郷でもある。世界の滅亡を暗示したとされる詩は日本でも有名だ。ある時、現地のノストラダムス研究家を一人の日本人が訪ねた。自分が救世主と記されている予言がないか調べたい、と。日本人は「アサハラ」と名乗ったという

▼オウム真理教の麻原彰晃(本名松本智津夫)教祖である。地下鉄サリン事件などを首謀したとして死刑が確定。6人の教団幹部と共に死刑が執行された

▼世界の滅亡を唱え、自らを救世主と称して、殺人も肯定する怪しい教えに、なぜ多くの若者は引き付けられ、犯罪史上、類を見ない凶悪なテロに突き進んだのか。松本死刑囚は「沈黙」を貫き、解き明かされない「疑惑」が残った

▼ラベンダーの語源はラテン語の「洗う」とも。地下鉄サリン事件から23年。死刑が執行されようと、遺族や後遺症に苦しむ被害者には、洗い流すことのできない悲しみや苦しみがこれからも続く。二度と同じ悲劇を起こさぬことが、せめてもの癒やしとなろうか。

=2018/07/11付 西日本新聞朝刊=

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