「緩やかに自殺する権利は否定しない」…

 「緩やかに自殺する権利は否定しない」。受動喫煙問題で識者が言っていた。皮肉な言い方ではあるが、成人が、がんなどのリスクを十分に理解し、他人に迷惑を掛けないのなら、自己責任でたばこを吸う権利は認められる-との趣旨だ

▼喫煙規制を巡ってはさまざまな意見がある。「緩やかに自殺する権利」はともかく「緩やかに殺人を犯す権利」は認められまい。他人のたばこの煙を吸わされて健康が損なわれることがない社会。その実現を目指した改正健康増進法が成立した

▼多くの人が集まる建物内は原則禁煙とし罰則も定めた初の法律だ。学校や病院、行政機関などは屋内完全禁煙。その他の職場などは煙が漏れない専用室での喫煙となる

▼ひと昔前、紫煙もくもくの中で働いていたことを思えば隔世の感。が、新法の効果には疑問符も。飲食店は全て禁煙にするはずが、小規模な既存飲食店は「例外」とされた。飲食業界や自民党の一部が強く反発したからだ

▼喫煙できる「例外」の飲食店は全体の55%。これでは「ざる法」との批判もある。一方、東京五輪を控えた東京都は条例で新法よりも厳しい規制を設けた。法律は最低限の基準と捉え、各自治体でさらに対策を進めてほしい

▼気になるのは規制の網からこぼれる家庭内の煙害だ。家族、とりわけ子どもの受動喫煙は虐待だと考えたい。もう一度言うが、緩やかに殺人を犯す権利は誰にもない。

=2018/07/20付 西日本新聞朝刊=

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