きょう火星が地球に大接近する…

 きょう火星が地球に大接近する。最接近時の距離は5759万キロ。6千万キロを切るのは15年ぶり。南東から南の空でひときわ赤く輝く姿が見られそうだ

▼赤い色は戦火や血を連想させるのか、火星の英語名「マーズ」はローマ神話の軍神マルスに由来する。惑星を記号で表す占星術では、火星は「♂」。軍神のやりと盾を図案化した

▼どこかで見た形。公共トイレの前あたりで。実は生物学者が雄を表す記号に転用し、男性マークとしても定着したという。女性や雌を示す「♀」は金星の記号から。愛と美の女神ビーナスである

▼火星は1877(明治10)年9月にも地球に大接近した。西郷隆盛が明治政府に反旗を翻した西南戦争が起きた年だ。天文学の知識がない当時の人々は、地球にどんどん近づいてくる赤い星に驚き恐れた

▼内戦で人心が動揺していたこともあり、「赤い星の中に陸軍大将の正装をした西郷が見える」とのうわさが流れて大騒ぎになった。これにちなみ「西郷星」は火星の異名に。また、近くに見えた土星を西郷の側近桐野利秋になぞらえ「桐野星」と呼んだ

▼神話か生物の記号か、はたまた維新の英傑か。いろんな思いを巡らせながら赤く輝く星を見上げるのも楽しい。望遠鏡でのぞいてみれば、西郷はいないけれど、北極や南極に「極冠」というドライアイスの氷河を観測できるかもしれない。火星が大きく見えるのは9月上旬まで。

=2018/07/31付 西日本新聞朝刊=

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