志半ばで亡くなった人は、あの世から無念の思いを訴え続ける-と昔の人は考えたのだろう…

 志半ばで亡くなった人は、あの世から無念の思いを訴え続ける-と昔の人は考えたのだろう。そう思わせる絵が福岡市博物館で開催中の「幽霊・妖怪画の世界」に

▼月岡芳年の浮世絵「西郷隆盛霊幽冥奉書」。軍服姿の西郷の幽霊が鬼気迫る表情で建白書を掲げている。西郷は明治維新の立役者でありながら、新政府の政策に反対して下野、九州で挙兵した

▼戦いに敗れて自刃したが、西郷びいきの庶民は「さぞ無念だったろう」と英傑の死を悼んだ。その遺志を酌むように、死後も政府に異を唱え続ける西郷が描かれた

▼この人もさぞや無念だったろう。沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事。米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設反対を訴え続け、志を果たせぬまま8日、亡くなった。元は自民党の政治家だった。米軍基地負担を押し付けられてきた沖縄の現状に憤り、保守でも革新でもなく、沖縄が心を一つにして不条理と闘おうと呼び掛け、4年前、知事に選ばれた

▼国との法廷闘争に敗れ、最後の手段である埋め立て承認の撤回を先月27日、表明した。「あらゆる手段を駆使し、新基地は造らせない」。病にやせ衰えながら、鬼気迫る様子で決意を示した。それが公の場に姿を見せた最後となった

▼死してなお、翁長さんは国に異を唱える「建白書」を掲げていよう。その遺志を地元はどう受け継ぐか。建白は本土の私たちにも突き付けられていることも忘れまい。

=2018/08/10付 西日本新聞朝刊=

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