「夕焼小焼」という名のバス停がある…

 「夕焼小焼」という名のバス停がある。場所は東京都八王子市上恩方町(旧東京府南多摩郡恩方村)。神奈川県との境に近い山あいの地で、この歌が育まれたことにちなむ

▼夕やけ小やけで日が暮れて/山のお寺の鐘が鳴る/お手々つないで皆帰ろう…とくれば続きの歌詞はお分かりだろう。恩方村出身の童謡詩人、中村雨紅(うこう)(1897~1972)の代表作だ

▼作詞当時、雨紅は北豊島郡日暮里町(現東京都荒川区)で小学校の教師を務めながら童謡づくりに取り組み、古里の山道の情景に重ねて詞を紡いだといわれる

▼夕日に加え、カラス、お月さま、小鳥、きらきら星…。歌の中で登場する空の光景はありふれているようで味わい深く、郷愁を誘う。そんな詩情が今の日本では失われつつある、と心配する声もある

▼現代人はせっかちで、そもそも視線が上を向いていない。四六時中、手元のスマホに目を落とし、道を歩くときも画面とにらめっこ。上はもちろん前すらろくに見ていない人が多い

▼話を戻そう。先のバス停。そばには八王子市が開設した自然体験施設があり、子どもたちには大人気。東京・渋谷区には「夕やけこやけルート」と名付けられた区内循環のコミュニティーバス路線がある。こちらは「夕焼小焼」の作曲者、草川信(1893~1948)が音楽教師を務めていた小学校の前を通るのがみそ。どちらのバスにも揺られてみたい。

=2018/08/25付 西日本新聞朝刊=

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