集団で暮らすペンギンは臆病な生き物…

 集団で暮らすペンギンは臆病な生き物。魚を捕るために海に入らないといけないが、そこには恐ろしい天敵の動物もいる。えさを求めて移動した群れは、水際に来ると、ためらい、立ちすくんでしまう

▼その中で、思い切って最初に海に飛び込む一羽を「ファーストペンギン」と呼ぶ。それを見た仲間は、後を追って次々と海へ。最初の一羽が奮い起こした勇気が、群れ全体を救うことになるのだ

▼ことしのノーベル平和賞は「ファーストペンギンの勇気」がたたえられた。選ばれた一人は、過激派組織にさらわれ、性暴力を受けたイラク人女性のナディア・ムラドさん。過酷な体験を証言し国際社会に告発した。「声を上げられない人々の声になる」と、虐殺や性暴力の根絶を訴える姿は胸を打つ

▼もう一人は、紛争下のコンゴで性暴力を受けた女性らの治療や支援に取り組む男性産婦人科医デニ・ムクウェゲさん。武装勢力に命を狙われたこともあるというが、脅しに屈せず闘い続けている

▼ノーベル賞委員会は、今回の平和賞は昨年から世界に広がった「#MeToo」(「私も」の意)運動とも共通する、と。この動きも、最初にSNSで性被害を告発した米国女優の「勇気」から始まり、各国の女性たちが後に続いた

▼ファーストペンギンの勇気は、あらゆる分野で世の中を変える原動力になる。そして臆病な「日和見ペンギン」も奮い立たせてくれる。

=2018/10/10付 西日本新聞朝刊=

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