きょうの暦は「啓蟄(けいちつ)」…

 きょうの暦は「啓蟄(けいちつ)」。啓は「ひらく」、蟄は「冬ごもりの虫」を表す。大地が暖まり、春の訪れを感じた虫たちが目を覚ます頃とされる

▼蟄の字をよく見ると、丸くなってまどろんでいる幸せそうな虫の姿。花咲く春の夢でも見ているか。「あと5分だけ」と布団の中で丸くなる冬の朝の幸せなら、私たちも知っている。例年はまだ寒い時季だが、穏やかな日が続くことしは春の足音がほら、そこまで

▼〈梅一輪一輪ほどの暖かさ〉(服部嵐雪)。先日訪ねた太宰府天満宮は紅白の梅が咲き競っていた。東風が運ぶ、すがすがしい香りを堪能したかったが、花粉症が恨めしい。梅の見頃はスギ花粉も最盛期。〈東風(こち)吹かば思いおこそう杉の粉くしゃみなしとてマスク忘るな〉

▼春の季語に「亀鳴く」。鎌倉時代の和歌が典拠とか。実は、カメは声帯がないので鳴かない。けれど、冬眠から覚めて気持ち良さそうに日なたぼっこする様子は、いかにも「クゥー」と声を出しそうだ。人間の想像などはどこ吹く風で、天満宮の池の亀はゆったりと首を伸ばしていた

▼雑誌「村」13号に掲載された内藤賢司さんの詩「北木屋 風信歌」から。〈農道を川の水面を山の背を/転がりながら/春が来る来る/ゆったりと生きるがいいぞと言うように〉

▼〈啓蟄の鍬やはらかに土に入り〉(藤吉靖信)。梅が香り、スギ花粉が飛び、カメが鳴いて、転がりながら春が来る来る。

=2019/03/06付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]