「打ったー、逆転サヨナラホームラーン。これぞ野球の醍醐味(だいごみ)だー」と実況アナが絶叫する…

 「打ったー、逆転サヨナラホームラーン。これぞ野球の醍醐味(だいごみ)だー」と実況アナが絶叫する。でも、この醍醐味って、どんな味だろう

▼辞書には「醍醐は乳から作った濃厚な、甘い食品。今のクリーム」と。昔は極めて貴重な食べ物だったのだろう。転じて醍醐味は「最高の仏の教え」「他の何ものにも代えることのできないもの」の意味に

▼話は平安時代に飛ぶ。空海の孫弟子に当たる聖宝(しょうぼう)は、京都の南東の山に五色の雲がたなびいているのを見た。上ってみると、一人の翁(おきな)が湧き出る水を口にして「醍醐なり」と言った

▼翁の正体は山の神。「この地をあなたに献じ、守護しよう」と告げられた聖宝は、そこに庵(いおり)を結び、観音菩薩(ぼさつ)を奉安した。これが真言密教の名刹(めいさつ)、醍醐寺の始まりと伝わる。九州国立博物館で開催中の「京都・醍醐寺 真言密教の宇宙」展で知った

▼平安時代に広まった真言密教は従来の仏教とは異なり、「現世利益」を説いた。熱心に信心すれば、この世で仏の恵みを受けられる。加持祈祷(きとう)によって厄よけや病気快癒、安産、立身出世までかなうとあれば、当時の人にとってこの上ない「醍醐味」。加持祈祷の実践を重視した醍醐寺に、天皇や貴族は篤(あつ)い信仰を寄せた

▼同展では聖宝に帰依した醍醐天皇が作らせた薬師三尊像(国宝)が見られる。穏やかな表情の薬師如来は千年以上の歳月に、どれほど多くの願いを聞いてきたのだろう。

=2019/03/07付 西日本新聞朝刊=

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