この女性童謡詩人の命日が東日本大震災の発生日とほんの1日違いなことに、因縁めいたものを感じる…

 この女性童謡詩人の命日が東日本大震災の発生日とほんの1日違いなことに、因縁めいたものを感じる。きょう3月10日は89回目の金子みすゞ忌。そしてあす11日は震災からちょうど8年である

▼震災直後しばらく、テレビから企業CMが消えた。人と家をのむ津波、街を焼く炎、拡大する原発事故。悪夢のような映像の洪水の合間、ACジャパンの公共CMで、みすゞの詩「こだまでしょうか」が何度も流れた。一服の清涼剤か鎮魂歌のように

▼〈「ごめんね」っていうと「ごめんね」っていう。こだまでしょうか、いいえ、誰でも〉。結びの一言が、未曽有の災害を自分のこととして捉えなさい、と諭すように聞こえた。彼女の詩には「命」への共感を呼び起こす力がある

▼そんなみすゞが26歳の若さで自殺したのはご存じか。原因は夫。自分は遊郭で遊び、みすゞには童謡の創作や手紙を禁じた。みすゞは離婚するが、3歳の一人娘を引き渡すよう迫られていた

▼命を絶つ前日、みすゞは写真館で最後の肖像を撮り、買ってきた桜餅を娘と食べた。遺書には、娘を心の豊かな子にしたいので母に育てさせて、と記してあった。命を賭した夫への抗議であった

▼3・11。時代の分水嶺(れい)などと大げさな言葉を用いずとも、いろんな命に思いを巡らせる、きょうあすにしたい。お薦めはみすゞのこの詩。〈鈴と、小鳥と、それから私、みんなちがって、みんないい〉

=2019/03/10付 西日本新聞朝刊=

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