学校に来ると声が出なくなる場面緘黙(かんもく)症の少女と、支え励ます教師…

 学校に来ると声が出なくなる場面緘黙(かんもく)症の少女と、支え励ます教師。先日の小欄で重松清さんの小説「青い鳥」を取り上げたところ、大分県日田市の男性から手紙が届いた。「私の教職生活の中でも現実にあったのです」-

▼30年ほど前。小学6年のクラスに同じ病名の女子児童がいた。「家ではよくしゃべるのに」と母親も原因が分からない。「学校が嫌なのか」「自分の態度が悪いのか」。担任として無力感ともどかしさが募った

▼卒業式が迫る。男性は「口で言ったら圧力に感じるだろうし、何度も読み返してくれるだろうから」と手紙で思いを伝えた。「はい」の二文字でいい。最後に先生はあなたの声を聞きたい…。式本番。名前を呼んだ。期待は砕かれた

▼4月。卒業生が遊びに来た。意外な、思いもしない事実を告げられた。「○○ちゃん、卒業式でちゃんと返事してたよ」「小さな声だったけど、近くにも聞こえるくらいの声で『はい』って」

▼「驚いて感激して、何より『ああ良かった』の思いでいっぱいでした」と男性は言う。「耳には聞こえなかったけど、今でも思い出すと声が聞こえるようでうれしさがこみ上げます」

▼小さな声を出すために、彼女はきっと大きな勇気を振り絞ったのだろう。自分のため。心配してくれた先生のために。男性の便りには「中学生になった彼女は、友達と普通に会話をしているとのことでした」とあった。

=2019/03/11付 西日本新聞朝刊=

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