他人には意味が分からなくても、当事者には大切なやりとりがある…

 他人には意味が分からなくても、当事者には大切なやりとりがある。フランスの作家ユーゴーが出版社に送った手紙は疑問符「?」の1文字。返信も感嘆符「!」の1文字。「世界で最も短い手紙」といわれる

▼「ああ無情」の邦題で知られる「レ・ミゼラブル」を出版したユーゴーは、評判が気になって「?」と書き送った。その返事が、売れ行き上々を伝える「!」

▼この7文字の意味は。「とうたすかかか」。人工透析治療を中止して死亡した腎臓病患者の女性=当時(44)=が亡くなる日の朝、夫に送ったメール。「何時(いつ)来るの?」「何時来るの?」に続く最期の言葉だ

▼妻の死の前日、夫は手術を受けた。翌日、麻酔から覚めると、妻は旅立っていた。夫は「とう(父ちゃん)たすけて」と打とうとしたのでは、と。携帯のメールは「か」を素早く4回打つと「け」に変換する。動かない指で3回打って力尽きたのか、と想像すれば胸が痛む

▼病院は、透析中止は死に至ると説明した上で継続か中止かを選択させた。女性は自分の意思で透析中止を決めたが、容体悪化後、中止撤回とも受け取れる発言をしたそうだ

▼苦しさで決心が揺らぐこともあろう。7文字は「生きたい」という必死の訴えのようにも。担当医は苦しむ女性に透析再開か苦しさを和らげるかを選ばせ、透析しなかったという。その対応には疑問符が付く。「無情」に思えてならない。

=2019/03/12付 西日本新聞朝刊=

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