「亀鳴く」は春の季語だが、実際はカメは鳴かない、と先日の小欄に書いた…

 「亀鳴く」は春の季語だが、実際はカメは鳴かない、と先日の小欄に書いた。同僚から「うちのカメは鳴くぞ」と“抗議”が。実は、わが家のカメも。鼻から息を吐くはずみに「キュ」、口を開けて「グゥ」。後者はげっぷの類いか

▼セミやスズムシは喉から声を出すわけではないが、一般に「鳴く」といわれる。「鳴く」は自らの意思で音を出すかどうかが重要なのかも

▼こいつも鳴くのか?と首をひねる変な季語が秋にも。「蚯蚓(みみず)鳴く」。辞書を引くと〈秋の夜、土中で「じいい」と鳴く声をミミズの鳴き声としたもの。実は螻蛄(けら)の声〉と

▼ケラはコオロギに似た虫で、土中に穴を掘ってすむ。前肢に発声器があるそうだ。一説では、一文無しを意味する「おけら」は、この虫が由来。正面から見ると万歳したような格好なので、「お手上げ」に見立てたとか

▼では、どうしてミミズは鳴くと思われたのか。こんな話がある。昔、ヘビは歌が上手だったが、目を持たなかった。歌を教えてほしいと頼むミミズに、ヘビは言った。「目と交換なら教えてやろう」。こうしてヘビは声を、ミミズは目を失った-

▼民俗学者の柳田国男は、歌のうまい盲目の座頭が、音曲の合間に語った物語ではないかと考えた。座頭は自身に重ねて、今は目がないミミズも、かつてはヘビのような美しい目を持っていたのだ、と。もしもミミズが鳴くのなら、きっと切ない声だろう。

=2019/03/13付 西日本新聞朝刊=

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