じゅげむ、じゅげむ、ごこうのすりきれ…

 じゅげむ、じゅげむ、ごこうのすりきれ…。ご存じ古典落語の「寿限無(じゅげむ)」。子どもを授かった父親が、寺の和尚に名付けを頼む。「寿限無」は限りのない寿命、「五劫(ごこう)の擦り切れ」は果てのない長い時…。欲張った父親は、和尚が考えたおめでたい名前を全部つなげ、「…ポンポコナの長久命の長助」で終わる長い長い名前に

▼大きくなったこの子がある日、けんかをした。こぶをつくられた相手の親が怒鳴り込んできた。「寿限無…が」と名前を呼ぶだけで時間がかかり、いつの間にやらこぶは引っ込んでしまった-。いくつかある落ちの一つ

▼子にどんな名前を付けるか、親なら誰しも悩むもの。共通するのは、幸せな人生を、という願いが込められていることだ。近頃は非常に奇抜な名前も多い。いわゆる「キラキラネーム」。人とは違う、個性的な子に育ってほしいとの思いからか

▼山梨県に住む高校3年の男子生徒が、家裁に改名を申し立て、許可された。親から与えられた名前は「王子様(おうじさま)」。「唯一無二の王子様のような存在」という母親の思いで名付けられたそうだ

▼本人は、この名前が「つらかった」と。会員証を作ろうとして偽名と疑われ、自己紹介のときは女子生徒に笑われ、傷ついたという

▼高校卒業を機に、生徒は改名を決意した。新しい名前で、新しい気持ちで、新たな生活へ踏み出してほしい。心にできたこぶが早く引っ込むといい。

=2019/03/15付 西日本新聞朝刊=

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