「のんべえ横町」と呼ばれるような場所にはどこか愛着を感じる…

 「のんべえ横町」と呼ばれるような場所にはどこか愛着を感じる。多くは鉄道の駅周辺の裏通り。ネオンの華やかさはないが気軽に入れて低料金の居酒屋やバーが軒を連ねる。今風に言えば「せんべろの街」だ

▼千円でべろべろに酔える-というのは少し大げさだが、東京葛飾区の私鉄沿線にそう呼ばれる街がある、と東京新聞が先日紹介していた。酒好きの間では、首都ならぬ「酒都(しゅと)」とも呼ばれているそうだ

▼大都会であっても、下町を歩けば庶民的な空間が残る。それが東京の魅力でもあろう。問題は地方都市。駅前商店街がシャッター通りと化し、「酒都」機能もじわじわと失われつつある

▼景気回復を示す政府の統計数字はどうも怪しい。「働き方改革」で残業が減った分、給料が目減りしたという声も聞く。であれば、なおさらサラリーマンらのオアシスが必要なのだが

▼葛飾と言えば、あのフーテンの寅さんの生地。「労働者諸君、頑張れ」と叫ぶ彼の口癖も思い出す。寅さんを演じた渥美清さんが逝ってはや23年。今年は「男はつらいよ」シリーズ第1作の公開から50年に当たり、年末に新作が公開される

▼企業や団体トップの相次ぐ不祥事や挫折劇を見ていて思う。出世至上の一本道は危うい。往々にして過信や慢心を伴う。人生に紆余(うよ)曲折は付きもの。大通りからそれた横道や裏道にも味わい深さがある。寅さんならうなずいてくれるだろう。

=2019/03/19付 西日本新聞朝刊=

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