ニュージーランドの2カ所のモスク(イスラム教の礼拝所)で銃が乱射され、100人近い死傷者が出た…

 ニュージーランドの2カ所のモスク(イスラム教の礼拝所)で銃が乱射され、100人近い死傷者が出た。事件があったモスクの近くで、現地の人々が悲しみと怒りをこらえながら伝統の踊りをささげる様子をテレビが伝えていた

▼先住民マオリの踊りは、ラグビーニュージーランド代表が国際試合の前に行う戦士の舞踏が有名だ。威嚇や戦意を鼓舞するだけでなく、相手への敬意や歓迎、惜別などの気持ちを表すときにも披露されるそうだ

▼銃を乱射した男は白人至上主義にとりつかれ、移民や人種、宗教の異なる人々を、白人社会を脅かす「侵略者」と思い込んで蛮行に及んだという。ちょっと待ってほしい。マオリが暮らしていたこの島を“侵略”し、植民地として支配したのは欧州からやって来た白人ではなかったか

▼第2次大戦後、独立したニュージーランドは、複数の文化や言語が共存する国造りを進め、移民に寛容な国として知られる。治安の良い福祉国家には日本からの観光客や留学生も多い

▼今回のテロは、世界を覆う人種差別主義、他の民族や宗教への偏見や憎しみ、そしてその負の感情をあおって政治的に利用する指導者たちの存在と無関係ではあるまい。暴力が生む憎しみの連鎖は何としても断ち切らねばならない

▼勇気と力を奮い立たせる戦士の踊り。犠牲者を悼むとともに、決してテロには屈しないという、寛容の国の決意に思えた。

=2019/03/20付 西日本新聞朝刊=

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