中国では古来、「木火土金水」の五元素が万物を形作ると考えられた…

 中国では古来、「木火土金水」の五元素が万物を形作ると考えられた。この五行思想に基づいて「青赤黄白黒」の五色を定め、方位や季節を象徴するものとした

▼文化審議会が国宝に指定するよう答申したキトラ古墳壁画(奈良県明日香村)は、石室の四方の壁に、方位に対応する神獣が描かれている。東に青竜、南に朱雀(すざく)、西に白虎、北に玄武。国内の古墳に残る貴重な極彩色壁画だ

▼季節に当てはめれば、東・青が春、南・赤は夏、西・白は秋、北・黒は冬。よって四季を青春、朱夏、白秋、玄冬と呼び、人生の「季節」を表すようにもなった

▼きょうは春分の日。このところの暖かさで、開花宣言を待ちきれずにつぼみを開く桜もあちこちに。卒業や入学、進学。舞い散る花びらと萌(も)えいづる新緑に彩られた、別れと出会いの季節は、まさに青い春

▼〈人の生涯のうち、一番美しくある青春の季節は、おのずから最も生きるにむずかしい季節である〉(伊藤整「青春」より)。人生や恋に悩み、胸の奥で暴れだす竜を抑えきれなくなりそうな若さである

▼福岡市西区の元岡古墳群から出土した「金錯銘大刀(きんさくめいたち)」も今回、重要文化財への指定が答申された。西暦570年を意味する「庚寅(こういん)」などの漢字が金で象眼されている。国内で暦が使われた最古の例となる可能性もあるそうだ。季節の移ろいを感じ、過ぎ行く年月を暦に刻んだ古人に思いをはせる春の一日。

=2019/03/21付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]